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男が欲しい夜
思いがけない誘い③
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イエローグリーンのワンピースが良く似合っている。おそらく、海外ブランドだろう。残暑が厳しかったが、疲れた様子は少しも見せず、エリは溌剌としていた。
「久し振り。エリさんが元気そうでよかったよ」
「スズキくん、スーツ姿がカッコイイよ。すっかり一人前のビジネスマンだね。見違えたよ」
スズキがスーツを着ていたのは仕事帰りだからなのだが、もし、カジュアルな服装だったら、エリの華やかさに圧倒されていたことだろう。エリはさりげなく、スズキの腕をとって、ロビーの奥にある喫茶店に誘った。
二人は空いていた窓際のテーブル席についた。有名ホテルのテナントなので、最も安いコーヒーですら1000円もする。明らかに、スズキには無縁の場所である。
「私はオレンジジュースにする。スズキくんは?」
スズキは「コーヒー」と答えかけたが、せこい男だと思われるかも、という考えがよぎり、
「僕も同じものかな。最近、コーヒーは飲みすぎだし……」
照れ笑いを浮かべながら、ウエイトレスにオーダーを伝えた。
エリがずっと笑顔を浮かべて、スズキを見つめていた。
「何?」
「男の子って、たった一年で随分かわるもんだなぁって、そう思っていただけ」
「エリさんも変わったよ。一年前よりきれいになった」
大学時代なら歯の浮くような言葉も、営業部で働いているおかげで、さらりと言える。
「ほら、大学時代はそんな風に言ってくれなかったよ」
そう言って、エリはクスクス笑った。
「久し振り。エリさんが元気そうでよかったよ」
「スズキくん、スーツ姿がカッコイイよ。すっかり一人前のビジネスマンだね。見違えたよ」
スズキがスーツを着ていたのは仕事帰りだからなのだが、もし、カジュアルな服装だったら、エリの華やかさに圧倒されていたことだろう。エリはさりげなく、スズキの腕をとって、ロビーの奥にある喫茶店に誘った。
二人は空いていた窓際のテーブル席についた。有名ホテルのテナントなので、最も安いコーヒーですら1000円もする。明らかに、スズキには無縁の場所である。
「私はオレンジジュースにする。スズキくんは?」
スズキは「コーヒー」と答えかけたが、せこい男だと思われるかも、という考えがよぎり、
「僕も同じものかな。最近、コーヒーは飲みすぎだし……」
照れ笑いを浮かべながら、ウエイトレスにオーダーを伝えた。
エリがずっと笑顔を浮かべて、スズキを見つめていた。
「何?」
「男の子って、たった一年で随分かわるもんだなぁって、そう思っていただけ」
「エリさんも変わったよ。一年前よりきれいになった」
大学時代なら歯の浮くような言葉も、営業部で働いているおかげで、さらりと言える。
「ほら、大学時代はそんな風に言ってくれなかったよ」
そう言って、エリはクスクス笑った。
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拙作『天使の穴には牙がある【R18】』を読んでいただき、本当にありがとうございます。どうぞ、お気軽に御覧ください。「お気に入り」登録や御感想を聞かせていただければ幸いです。『裸のプリンス【R18】』と『ブラックアイドル【R18】』も合わせて、よろしくお願いいたします。ホラー・ミステリー大賞に参加しますので、合わせてお願いします。
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