天使の穴には牙がある【Ｒ１８】

男が欲しい夜

思いがけない誘い①

　スズキは有頂天だった。かつて憧れていたエリから、突然、連絡をもらったのだ。

　エリは大学時代から、男どもの人気の的だった。大学祭のミスコンで優勝したし、ルックスとスタイルの良さは折り紙付きだ。てっきり将来はタレントか女子アナだろう、と思っていた。事実、エリの元には芸能事務所のスカウトがきていたらしい。

　スズキは一部上場企業に就職が決まった後、エリに思い切って告白をした。結論から言うと見事玉砕してしまった。さほど落ち込まなかったのは、あらかじめそうなると予想していたせいだろう。所詮しょせん、違う世界の住人なのだ、とスズキは心のどこかで思っていたのだ。

　だが、一年ほどが経った昨晩、信じられないことが起こった。

　あのエリから思いがけず、電話をもらったのだ。告白をした時、あっさり断られたのに、まさか、こんなことがあるとは、スズキは思ってもいなかった。

　エリは明るい声で、世間話と思いで話をひとしきりしてから、
「スズキくんに話があるんだけど、いつ頃なら時間が空いているかなぁ」
「え、今でも全然かまわないけど、どんな話？」
「ううん、電話ではちょっとね。直接あって話したいんだ」

　スズキは失恋した過去など忘れて、たちまち心が浮き立ってしまう。待ち合わせの日時と場所を決めて電話を切るまで、完全に夢うつつの状態だった。