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甘く危険な果実①
しおりを挟む言ってみれば、これは〈セックス・セラピー〉なのかもしれない。
僕は弥生さんの華奢な身体を抱きしめ、艶やかな髪の毛をなでながら、そう思う。
弥生さんは3年前、付き合っていた彼氏にレイプされたという。言い間違いではない。それはいわゆる、デートレイプだった。
彼氏とロードショーの映画を観た後、イタリアレストランで食事を楽しんだ。ワインも少し飲んだ。そこまでは、普通のデートだった。
酔い醒ましのため、彼氏のマンションに立ち寄ったのが、間違いだった。部屋に上がるなり、彼氏の態度が急変。いきなり、顔に下半身をおしつけられたという。
もちろん、口でのサービスを強要されたのだ。肉体関係はあったけど、オーラルセックスを求められたことはない。いつも優しい彼氏がそんなことをするなんて、想像もしていなかった。
弥生さんは泣いて抵抗したけれど、若い男の性欲は容易には止まらない。乱暴に服をはぎとられ、貪り食われるみたいに犯されたという。
濡れていないのに、無理やりに突っ込まれられたのだ。身体が引き裂かれるような痛みだったろう。そんな下卑た行為はセックスとは呼べない。
弥生さんは即刻、彼氏とは別れた。心の傷は治りづらく、やがて膿んでしまった。
3年経った今でも、男性が怖くて仕方がないという。セックスはおろか、手に触られることすら避けてきた。
そんな弥生さんが僕の元にやってきた。僕のお客様に弥生さんのお友達がいて、そのお友達から僕を紹介されたらしい。
僕はセラピストでもカウンセラーでもないが、お客様の話に耳を傾けることはできる。聞き上手は、この仕事において大きなウェイトを占めるのだ。
コールボーイは毎回欠かさず、お客様とセックスをするわけではない。あくまで、お客様の御希望を第一としている。だから、弥生さんが御要望に合わせて、喫茶店でお茶をしたり、ショッピングに付き合ったりすることは、決して珍しいことではない。
そんなプラトニックなデートを三度経て、今日のスキンシップまでこぎつけたのだ。
弥生さんに穏やかな表情で、とてもリラックスしている。男に抱きしめられ、髪の毛をなでられることができたのだから、これは大きな進歩だろう。
弥生さんは痩せているけど、胸は豊かだし、脚だってスラリとしている。贔屓目なしで、美人だと思う。中学高校時代には、たぶん優等生で、ひょっとしたら学級委員だったのかもしれない。
クラスの男子は皆、弥生さんに憧れていて、でも、美人すぎて誰も手が出せない、というようなタイプだったのかも。ツルリと丸いおでこを見ながら、そんなことを考える。
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