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最もセクシーな仕事⑦
しおりを挟むココナさんがようやく、ノートパソコンを閉じた。
「マヤさんからさっき、お褒めの連絡があったわよ。“これからもずっと、シュウにお願いしたい”ってさ」
「僕の〈にわかSキャラ〉がお気に召したのなら、素直にうれしいですね」
ココナさんは笑顔で、小首を傾げる。
「そうなのかな。いや、〈にわかSキャラ〉の部分だけど、シュウって元々、Sでしょ。時々、ひどく冷たく見えることがあるもの。興味のない人には妙にそっけないというか、ものの見事にスルーしちゃうよね」
「そんなことはないと思いますよ」
「ふん、自分でもわかっているくせに」
なるほど、ココナさんの眼はごまかせない。時折り、人づきあいが面倒臭くなる。レイカさんに失恋して、『キャッスル』を去った後、誰とも会いたくない時期がしばらくあった。
何もする気にもなれず、ほとんど部屋に閉じこもっていた。たまに外出をしても、店員さんのぞんざいな応対に腹が立ったり、他人のマナー違反に苛立ったりもした。あの頃の僕は、仏頂面の無愛想で、さぞ嫌な奴だったと思う。
「わかりました。立ち居振る舞いには注意するようにします」
ココナさんは苦笑する。
「いやいや、あまり深刻に受け止めないでね。シュウの仕事ぶりは完璧だし、全然問題はない。ただ、ちょっと気になっただけ。今の君はどこか、目標を失ったような感じだからさ」
そんな風に見えているとは意外だった。
「目標といっても、目の前の仕事をこなすことで精一杯ですから。いろいろありますけど、充実感と達成感があるから、この仕事は好きですよ」
「うん、それなら結構。ただ、吉原の女の子たちと同じで、君の仕事は肉体以上に、精神のケアが大事なのよ。うまく気分転換を図らないと、無気力、無感動の罠にからめとられてしまう。これはマジな話だから」
そういえば、レイカさんも以前、同じようなことを言っていた。確か、こんな感じである。
「お客様への興味や好奇心を失ったら黄色信号。お客様の言葉を拒絶して、否定したくなったら赤信号。さらに、お客様と会うことを苦痛に感じたら、潮時」
その兆しはないけれど、そうならないように注意しよう。
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