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犯罪者
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私は振り返り、たずねた。
「君は人を殺したいと思ったことはあるかい?」
「博士、おかしな質問ですね。 それは人気のない場所で話しましょう」
井岡はそう言って、案内する。
この青年は人と関わるのが嫌いなのか話題が重たかったためだろうか。
その場所は穴場のところといえるだろう。
私は知らない場所である。
だが、妙に落ち着く。
建物の外観は白く、屋根が半分だけしかない。
屋根のないところはカビやほこりがひどい。
多分、青年が掃除をしないであろうと窺える。
屋根のある部分はキレイである。
木でできたイス2脚と木製の正方形のテーブルがひとつあるのだ。
青年が持ってきたのだろう。
手作りではないようだ。
そばに木くずやノコギリ、やすり、サンドペッパーといった類いのものは見当たらない。
「良い場所でしょう。 ここは訳があって使われていないんです」
「ほおー、それは興味がある話だ。 話してもらえるかい」
「いいでしょう。 長くなりますよ」
井岡はそう言って、説明を始めた。
この建物は築100年と歴史がある。
建物が使われていない理由はある事件があったそうだ。
築10年と経ったとき、街に誇れる建築の仕事をしている従業員たちがいた。
人数は100名とこの街だけでやっていた。
ある日のことだ。
社員旅行で総勢40名は旅行に行っていた。
残りの60名は会社を休むわけにはいかず、出勤か休んでかにわかれる。
それは生死をわけるものとなる。
犯罪者ふたりによって出勤した30名は縛られた。
当時の場所が悪かったといえる。
建物は数キロ先にあるし、取引相手は2ヶ月に1回と訪れるくらいだ。
運悪く、取引相手は2ヶ月先になっている。
相手は一般の客ではなく、企業相手なのだ。
犯罪者の条件として好都合である。
従業員30名を縛りあげたまま起きた状態でひとりずつナイフで心臓を刺していたそうだ。
「犯人は捕まったのか?」
「捕まりました。 ふたりは何と言ったと思います? 一度に大勢の人間の命を奪う感覚を味わいたかった。 また、そうしたらどうなるか知りたかったってね」
「それが関係してここは使われていないわけか」
「そうです。 一部しか知り得なかった情報が時をこえて、僕にも伝わっている。 噂とは怖いものですね」
「噂? 最初は噂だけだったというのか」
「口が軽い人が広めたんでしょう」
私の気のせいだろうか。
井岡はこの話題は生き生きとしている。
私にとって楽しい話題であった。
犯罪者の気持ちとなり、頭の中で犯罪をしたのだ。
たまらないものだった。
この話題について私は長年住んでいて、知らなかったのだ。
過去の資料にはなかった。
「君はどうして知っているんだ?」
「祖父がその生きている従業員だからです。 今はこの世にいませんが」
青年は軽い口調で言う。
「残念だよ。 もっと聞きたかったんだが・・・」
「それが辛いせいでしょうね。 それ以上聞けなかったんですよ」
井岡の落ち着く場所だからだろうか。
人前にいるときより饒舌になっている。
私の質問を答えるはずが、いつの間にか彼のペースになっているのだ。
「君は人を殺したいと思ったことはあるかい?」
「博士、おかしな質問ですね。 それは人気のない場所で話しましょう」
井岡はそう言って、案内する。
この青年は人と関わるのが嫌いなのか話題が重たかったためだろうか。
その場所は穴場のところといえるだろう。
私は知らない場所である。
だが、妙に落ち着く。
建物の外観は白く、屋根が半分だけしかない。
屋根のないところはカビやほこりがひどい。
多分、青年が掃除をしないであろうと窺える。
屋根のある部分はキレイである。
木でできたイス2脚と木製の正方形のテーブルがひとつあるのだ。
青年が持ってきたのだろう。
手作りではないようだ。
そばに木くずやノコギリ、やすり、サンドペッパーといった類いのものは見当たらない。
「良い場所でしょう。 ここは訳があって使われていないんです」
「ほおー、それは興味がある話だ。 話してもらえるかい」
「いいでしょう。 長くなりますよ」
井岡はそう言って、説明を始めた。
この建物は築100年と歴史がある。
建物が使われていない理由はある事件があったそうだ。
築10年と経ったとき、街に誇れる建築の仕事をしている従業員たちがいた。
人数は100名とこの街だけでやっていた。
ある日のことだ。
社員旅行で総勢40名は旅行に行っていた。
残りの60名は会社を休むわけにはいかず、出勤か休んでかにわかれる。
それは生死をわけるものとなる。
犯罪者ふたりによって出勤した30名は縛られた。
当時の場所が悪かったといえる。
建物は数キロ先にあるし、取引相手は2ヶ月に1回と訪れるくらいだ。
運悪く、取引相手は2ヶ月先になっている。
相手は一般の客ではなく、企業相手なのだ。
犯罪者の条件として好都合である。
従業員30名を縛りあげたまま起きた状態でひとりずつナイフで心臓を刺していたそうだ。
「犯人は捕まったのか?」
「捕まりました。 ふたりは何と言ったと思います? 一度に大勢の人間の命を奪う感覚を味わいたかった。 また、そうしたらどうなるか知りたかったってね」
「それが関係してここは使われていないわけか」
「そうです。 一部しか知り得なかった情報が時をこえて、僕にも伝わっている。 噂とは怖いものですね」
「噂? 最初は噂だけだったというのか」
「口が軽い人が広めたんでしょう」
私の気のせいだろうか。
井岡はこの話題は生き生きとしている。
私にとって楽しい話題であった。
犯罪者の気持ちとなり、頭の中で犯罪をしたのだ。
たまらないものだった。
この話題について私は長年住んでいて、知らなかったのだ。
過去の資料にはなかった。
「君はどうして知っているんだ?」
「祖父がその生きている従業員だからです。 今はこの世にいませんが」
青年は軽い口調で言う。
「残念だよ。 もっと聞きたかったんだが・・・」
「それが辛いせいでしょうね。 それ以上聞けなかったんですよ」
井岡の落ち着く場所だからだろうか。
人前にいるときより饒舌になっている。
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