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犯罪者
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私は新人刑事と別れた。
あの現場からは他に得るものはなかったのだ。
また起きるなら、2つ3つは何か情報が得られるだろう。
少し散歩する。
止まっていては新しく発見することはできないはずだ。
行動を起こそう。
私には友人と呼べる人物はいない。
自分の興味をもつものが常人とは違う。
そのせいか、友人は奇妙なもので見ているかのような目でみられるのだ。
そんな目で見られても寂しい、悲しい、辛いといった感情はわきあがらなかった。
孤独が心地よいのだ。
うん? 青年は他の人とは違う何かを感じさせる。
コンビニから出ていく青年はジーンズ生地のシャツと黒いジーンズをしている。
私には興味を惹かれるものがあった。
20代くらいの男性で顔は丸く、幼くみえる。
雰囲気は大人びているのだ。
青年と目が合う。
青年は近づいてきた。
「あなたは久保田博士ですよね?」
青年はコンビニの袋の中にある雑誌を取りだし、開けてみせた。
「そうだけど・・・ 君は?」
「あなたが元教えていた現役大学生の井岡司といいます」
久保田は上手な作り笑いをうかべる。
「君は作り笑いが上手だね。 その笑いで何人を騙してきたんだい」
「騙しているなんて悪い言葉ですね。 作り笑いは誰もがやっています。 人間関係を円滑に進めるためにやっているでしょう」
面白い。 焦りはしないか。
作り笑いは当然の行為だと認める。
今日は良い日だ。
「そうだね。 君は面白いものを見たくないかい?」
久保田は無言で何を言いたいといった顔をしている。
「この近くで殺人現場があるらしいんだ。 そこへ向かおうじゃないか」
「面白いものがそれですか。 普通は映画館や遊園地ですよね」
言葉は断っているが、目は輝いている。
行きたいはずなのに抑えているはずだ。
少しの時間を接していてわかることがある。
井岡司は私と同じような人間だ。
「君はなぜ我慢するんだ? 事件を間近でみられるのだよ。 こんなチャンスはないはずだ」
「失礼ですが、僕はあなたと違うんです。 事件は小説や映画だけでいいです」
「そうかい。 私の勘違いだったようだ」
「ま、待ってください。 あなたと行けば入れるんですか?」
勘違いじゃなかった。
話に乗ってきた。
私と同じような人間だ。
「あぁ、いけるとも」
現場に戻ると刑事たちは帰っていた。
警備として3、4人はいる。
警備には井岡を私の助手としていれた。
「博士、本当にいいんですか。 僕はどこにでもいる学生ですよ」
「いいよ。 ほら、見てごらん」
私は驚いた。
青年は嫌な表情を浮かべずにまじまじと見ている。
感情が欠落しているのか。
過去に死体を1回見ていて、恐怖を克服したのだろうか。
あるいは感情そもそもが欠落している。
さすがにないだろうが、人を殺したことがある。
いや、ないだろう。
考えすぎだ。
「君は過去に死体を見たことがあるのかい?」
「え? 僕はまともじゃないですよね。 死体を目をそらさずに見ていますしね。 えっーと、一度はあります。 何の事件だったか忘れましたけど、見たことは覚えています」
あの現場からは他に得るものはなかったのだ。
また起きるなら、2つ3つは何か情報が得られるだろう。
少し散歩する。
止まっていては新しく発見することはできないはずだ。
行動を起こそう。
私には友人と呼べる人物はいない。
自分の興味をもつものが常人とは違う。
そのせいか、友人は奇妙なもので見ているかのような目でみられるのだ。
そんな目で見られても寂しい、悲しい、辛いといった感情はわきあがらなかった。
孤独が心地よいのだ。
うん? 青年は他の人とは違う何かを感じさせる。
コンビニから出ていく青年はジーンズ生地のシャツと黒いジーンズをしている。
私には興味を惹かれるものがあった。
20代くらいの男性で顔は丸く、幼くみえる。
雰囲気は大人びているのだ。
青年と目が合う。
青年は近づいてきた。
「あなたは久保田博士ですよね?」
青年はコンビニの袋の中にある雑誌を取りだし、開けてみせた。
「そうだけど・・・ 君は?」
「あなたが元教えていた現役大学生の井岡司といいます」
久保田は上手な作り笑いをうかべる。
「君は作り笑いが上手だね。 その笑いで何人を騙してきたんだい」
「騙しているなんて悪い言葉ですね。 作り笑いは誰もがやっています。 人間関係を円滑に進めるためにやっているでしょう」
面白い。 焦りはしないか。
作り笑いは当然の行為だと認める。
今日は良い日だ。
「そうだね。 君は面白いものを見たくないかい?」
久保田は無言で何を言いたいといった顔をしている。
「この近くで殺人現場があるらしいんだ。 そこへ向かおうじゃないか」
「面白いものがそれですか。 普通は映画館や遊園地ですよね」
言葉は断っているが、目は輝いている。
行きたいはずなのに抑えているはずだ。
少しの時間を接していてわかることがある。
井岡司は私と同じような人間だ。
「君はなぜ我慢するんだ? 事件を間近でみられるのだよ。 こんなチャンスはないはずだ」
「失礼ですが、僕はあなたと違うんです。 事件は小説や映画だけでいいです」
「そうかい。 私の勘違いだったようだ」
「ま、待ってください。 あなたと行けば入れるんですか?」
勘違いじゃなかった。
話に乗ってきた。
私と同じような人間だ。
「あぁ、いけるとも」
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「いいよ。 ほら、見てごらん」
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あるいは感情そもそもが欠落している。
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いや、ないだろう。
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「君は過去に死体を見たことがあるのかい?」
「え? 僕はまともじゃないですよね。 死体を目をそらさずに見ていますしね。 えっーと、一度はあります。 何の事件だったか忘れましたけど、見たことは覚えています」
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