犯罪者と博士

ナマケモノ

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犯罪者

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 次の日、目覚めると地方ニュースで取り上げられている。
 胸がおどる。 ニュースによれば、商店街のど真ん中に男性の死体がひとつ見つかったのを報道していた。
 インタビューアは第一発見者にインタビューをしている。
 第一発見者は暗い顔をしていて、発言していく。
 発言は途切れ途切れでどうも要領をえないものだった。
 第一発見者にとって、恐ろしいことだったというのが伝わる。
 事件は5分と短い尺だった。
 僕はあまり大きく取り上げられないのが、ニュースを最初に観たときより気持ちは冷めていた。
 思えばこんなものか。
 回数を重ねてアピールしていくしかない。
 僕は考える。
 前にやった遺体を掘り起こし、別の場所に置いていくか。
 またはやらない選択もある。
 状況は世間で自分につながるものはまだ出ていない。
 可能性としてはニュースになったものくらいだ。




 大丈夫だ。 まだ続けられる。
 こんな愉快なものを自分でくずしてはだめだ。
 僕の考えが少し変わってきている。
 1件目をやったときは罪悪感なんかなかった。
 むしろ、興奮を覚えたものだ。
 赤い色が綺麗に飛び散るさまに初めて血が綺麗にみえたのだ。
 そして、心を躍らせるのを知った。
 今は違う。 隠そうとせず、前にアピールしていこうとする自分がいる。
 これではだめなんだ。
 自分を抑えなければならない。
 そういえば、今日は休みの日だ。
 何をしようか。 サイコホラーの映画でも借りてきて時間を楽しもう。
 僕には友人や恋人はいらない。
 自分のペースを他人に邪魔されるのが嫌だ。
 理解できる人は犯罪者だけだ。




【2】

 私は警察から依頼があり、現場に向かうことになる。
 朝のニュースを観たが詳しいことは報道されていない。
 被害者がどんな状態なのか。
 現場はどんな状況か。
 私は大学で教授をやっていた。
 教えるのを目的としていない。 犯罪者の心情を純粋に知りたかったのだ。
 また、普通の人間とは逸した行動に興味がある。
 教授の立場を利用して、資料を読み漁った。
 あるのは文字だけなのだが、想像して読むのがたまらなかった。
 本を出したら、ミリオンセラーとなったのだ。
 本の影響なのか、警察の初めて呼び出され、事件を一緒に解決してほしいと言われた。
 一部は怪訝な表情で私をみた。 
 だが、見事解決したのだ。
 次からも来てほしいと向こうから願ってくる。
 私はチャンスを逃すわけにはいかなかった。




 実際に事件にふれることができるのだから。
 眼前にあるのは男性の遺体だ。
 右肩に刺した跡と左肩にも刺されている。
 よく見なければ見落とすだろう。
 ミシンに使う針くらいの大きさか。
 首もとに絞殺の跡がある。
「初めまして、久保田博士。 新しく担当する国仲さおりです」
「初めまして、久保田涼です。 靴は変えたほうがいいですよ」
「なぜですか?」
「ハイヒールのかかとの部分に小さな割れ目が入っているからです。 スーツがくたびれていることから足を棒にして何社かまわったでしょう。 大学生だったようですね。 刑事になるか迷って、刑事では仕事に就こうと考えたのでは」
「よくお分かりで。 シャーロック・ホームズのような洞察力でもあるのですか」
「いいえ、こうではないかと想像しただけです。 ただの勘というやつですね」
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