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目覚めた男
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「僕のあとに治療した人はどれくらいでしょう」
青年は思案したが、忘れたのだろう。
青色のファイルを取り出して広げる。
「こちらです。 80年の間に5万人は治療されています」
「80年? 10年間は僕以外は入っていないのですね」
「はい。 後に喋ろうと思いましたが、資料からどうぞ」
僕は青色のファイルを受け取り、視線を落とす。
最初の1年間は警戒をされていたのか、10人と人数が少ない。
2年目から口コミが広がったのかもしれない。
前年と比べて、人数は1000人と急増している。
3年目からは信頼を得たのだろう。
1000人を超えた患者数がいたようだ。
「5年間は見守られた。 ここまではいいですね? じゃあ、次にいきましょう。 祖父の失敗をしました。 障害を抱えることを言ってしまったこと。 患者は受けようにも疑心暗鬼にさせてしまったのです。 祖父はそのことを悔やんでいました 」
青年はフゥーと息を吐く。
「あなたに空白の5年間も眠っているにも関わらず、謝っていた。 あなたのような患者を助けるためにどうすればできるか考えた。 データにあるように2020年から本格的に開始された」
「その打開策とは?」
「データにはないですが、無料で1年の治療を行ったのです。 あのカプセルは1年で治る理論だからですね。 しかし、全治するわけではありません。 9割ぐらいしかできない」
変だな。 話だと1年で9割ぐらい治るだから、もうちょっと時間をかければ全治することになるはず。
ということは当時の僕は説明を受けているはずで、90年も眠る必要がないはずだ。
長時間の使用は障害を起こすことになる。
つまり、90年もやらなくていい。
それよりは短期間で済ませたはずだ。
当時の僕は何を考えていたのだろうか。
いや、こういう考えもできる。
誰かが必要以上に長くした。
それだと自分は誰かに恨みを買っていたか、何らかの目的がその人物にはあったのだろうではないか。
「あの・・・ 大丈夫ですか?」 心配した顔でのぞきこむ。
「大丈夫です。 僕がなぜ90年間眠っていたか分かりませんか?」
青年は何を訊いているのだろうと言いたげに首を横にふる。
そりゃあ、そうだ。
目の前にいるのは長谷川博士の子孫だ。
長谷川博士から聞かされないかぎり答えられるわけがない。
また、おかしな質問をしてしまった。
「あなたは長谷川博士の子孫ですよね。 3日前に退院した人物を探してもらえませんか」
「できることはできます。 あなたは特別にやりますけど、できるだけあまり頼まないでくださいね」 しぶしぶと答えた。
「助かります。 できるなら、今回だけにします」
青年はデスクから端末を探し、端末をみつけタッチする。
画面が浮き上がり、僕にもみえるようになった。
本棚をスクリーン代わりにする。
青年は操作をして、3日前に退院した人物の項目が出てくる。
ひとりだけだ。
そのひとりの項目をタッチしたが、“エラー”と文字が出た。
青年は携帯電話を取り、電話をかける。
一言、二言で電話を切った。
もう1回タッチすると人物の名前と画像が出てくる。
木下椿という名前の女性だ。
瞳は赤色をしている。
茶色の髪をしており、目はつり目で大きい。
鼻は高く、上唇は薄くて下唇は上唇と比べて少し厚い。
瞳の色が日本人ではない。
名前からは日本人の名前ではあるようだけど、どこか外国の血が入っているのか。
「知り合いですか?」
「いいえ、お礼を言われたものですから誰かと気になっていたのです」
「あなたのことをニュースなんかで目にしたのでしょうね」
青年は思案したが、忘れたのだろう。
青色のファイルを取り出して広げる。
「こちらです。 80年の間に5万人は治療されています」
「80年? 10年間は僕以外は入っていないのですね」
「はい。 後に喋ろうと思いましたが、資料からどうぞ」
僕は青色のファイルを受け取り、視線を落とす。
最初の1年間は警戒をされていたのか、10人と人数が少ない。
2年目から口コミが広がったのかもしれない。
前年と比べて、人数は1000人と急増している。
3年目からは信頼を得たのだろう。
1000人を超えた患者数がいたようだ。
「5年間は見守られた。 ここまではいいですね? じゃあ、次にいきましょう。 祖父の失敗をしました。 障害を抱えることを言ってしまったこと。 患者は受けようにも疑心暗鬼にさせてしまったのです。 祖父はそのことを悔やんでいました 」
青年はフゥーと息を吐く。
「あなたに空白の5年間も眠っているにも関わらず、謝っていた。 あなたのような患者を助けるためにどうすればできるか考えた。 データにあるように2020年から本格的に開始された」
「その打開策とは?」
「データにはないですが、無料で1年の治療を行ったのです。 あのカプセルは1年で治る理論だからですね。 しかし、全治するわけではありません。 9割ぐらいしかできない」
変だな。 話だと1年で9割ぐらい治るだから、もうちょっと時間をかければ全治することになるはず。
ということは当時の僕は説明を受けているはずで、90年も眠る必要がないはずだ。
長時間の使用は障害を起こすことになる。
つまり、90年もやらなくていい。
それよりは短期間で済ませたはずだ。
当時の僕は何を考えていたのだろうか。
いや、こういう考えもできる。
誰かが必要以上に長くした。
それだと自分は誰かに恨みを買っていたか、何らかの目的がその人物にはあったのだろうではないか。
「あの・・・ 大丈夫ですか?」 心配した顔でのぞきこむ。
「大丈夫です。 僕がなぜ90年間眠っていたか分かりませんか?」
青年は何を訊いているのだろうと言いたげに首を横にふる。
そりゃあ、そうだ。
目の前にいるのは長谷川博士の子孫だ。
長谷川博士から聞かされないかぎり答えられるわけがない。
また、おかしな質問をしてしまった。
「あなたは長谷川博士の子孫ですよね。 3日前に退院した人物を探してもらえませんか」
「できることはできます。 あなたは特別にやりますけど、できるだけあまり頼まないでくださいね」 しぶしぶと答えた。
「助かります。 できるなら、今回だけにします」
青年はデスクから端末を探し、端末をみつけタッチする。
画面が浮き上がり、僕にもみえるようになった。
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ひとりだけだ。
そのひとりの項目をタッチしたが、“エラー”と文字が出た。
青年は携帯電話を取り、電話をかける。
一言、二言で電話を切った。
もう1回タッチすると人物の名前と画像が出てくる。
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