目覚めた男

ナマケモノ

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目覚めた男

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 ホテルで朝食を済ませて、僕は北にあるという長谷川博士の子孫が住む邸宅に徒歩で向かう。
 タクシーに乗ってロボットの接客を見たかったが、歩いてとにかく情報が欲しかった。
 僕はこの時代ではほんの少ししか知らないのだ。
 途中に驚くことがあった。
 水が服にかかる人がいたけど、服は水をはじいていた。
 服に撥水はっすい効果がある。
 試しに自分の服にかけてみたが同じだ。
 服も進歩しているようだ。
 一体、何が進歩していなくて何が進歩しているのか楽しみながら歩く。
 新たな発見はないかと進んでいれば、邸宅に着く。
 インターフォンを鳴らす。
 閉まっていた門が開く。
 入っていいと解釈して真っ直ぐ進む。
 庭にはキレイにそろえれた草が生えている。




 門から200㎡進むと玄関には長谷川博士の子孫らしき人物がいた。
 物腰が柔らかくて笑顔に優しさを感じられる青年だ。
 歳は自分と変わらないくらいにみえる。
 青年は家に招き入れた。
 僕が嬉しかったのは恐怖のいろを浮かべなかったことだ。
 この青年は僕が来ることを知っていたのだろうか。
「お目覚めになったようですね。 気分はいかがですか?」
「ええ、正直言って記憶がないことに困っています。 長谷川博士のことを知ることと僕の記憶が戻る方法を知るために来ました」
「残念ながら記憶が戻る方法は知りません。 祖父のことは教えることはできます」
 祖父? 青年の父親はどこにいるのだ。
 父親のことを訊いて気まずい雰囲気になることが、あるかもしれないと思い、質問は避けた。
「では、祖父のことを教えてもらえますか」
「祖父についての記録が残っている部屋がありますのでそちらで喋りましょう」




 リビングから歩き、地下1階の部屋へ行く。
 部屋へ入るのにセキュリティがしかれている。
 扉の横に指紋認識と声認識、網膜認識の3つがある。
 この部屋だけは守りたい何かがある。
 そう思わせる。
 青年の認識が終えたようで、ピーと緑色のランプが光る。
「あなたのことは祖父から聞かされていました。 ここに訪れることになるだろう、その時は教えるんだと」
 だから驚かなかったのかと合点がいく。
 青年は本棚を見渡して続ける。
「あなたは祖父の第1実験のものです。 危険をかえりみずやったのです。 当時は怪しい人物と祖父はみられていました。 ですが、あなたがやったことにより5年は世間からあなたは見守られたのです。 5年が経ち、異常はみられないことが理解され治療という点ではなく、未来をみるという点で注目されました」
 青年は一冊のファイルを取りだし、机に置いて開いた。
 当時の記事と僕が眠っている写真がある。




 また、僕が異常はないことを示すデータらしきものがある。
 僕にはさっぱり分からないが、異常はなかったことだけは理解できる。
「未来をみる?」
「そうです。 注目をした人はタイムマシン感覚の考えだったのでしょう。 ご存じのとおり、記憶障害を抱えることを祖父はしぶしぶ訴えました。 祖父にとって患者を不安にさせる材料だったからあまり口にしたくなかった」
「後に治療に注目されたのでしょう」
「はい、されました。祖父は最初から治療困難の患者を助けるために言っていましたからね。 タイムマシン感覚の考えの人は勝手な考えを抱いていたのでしょう。治療という点に注目が変わりました 」
 さっきからこの青年は祖父を良く言っている。
 反対意見のものたちには毒が吐かれている。
 僕は言い過ぎではないかと言えなかった。
 教えてもらっていて、招かれているうえに初対面だからだ。
 僕はこらえた。
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