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扉が開く。たぶん、依頼だろう。
 宮田は客に声をかける。
「今日はどういったご依頼でしょうか?」
「あなたが探偵の木村さん?」
 宮田は内心思う。
 どこが探偵にみえるのだろうか? 見えるとしたら、3人用の黒色のソファーで腹の上で手をあわせ、横になっている木村のほうがみえるだろう。
「いいえ、ソファーでくつろいでいる彼です。」
「あぁ、そう。」と女性は答えた。
 ソファーでくつろぐ木村を変に見ているんだろう。
 180cm で八頭身で細身の体に端正な顔で、肌は白く日本人離れしたスタイルもある。
 天然パーマで2つのティーカップを女性を見ずに迷う仕草をみせる。
 1つはティー、2つめはブラックコーヒー。 そばにはシロップとミルクがそえられている。
 女性が咳払いする。
「あなたが木村さんね?」
「はい、そうです。 宮田、代わりに対応してくれないか。 俺はコーヒーを飲むかティーを飲むかを迷っている。」
 木村はソファーで座る体勢になり、ボリボリと頭をかく。
 女性はむっとした。
 当然のことだ。 依頼をしにきたのに探偵はめんどくさそうにしているのだ。
 こんな探偵はどこにもいないだろう。
 木村は鋭い洞察力で事件を解決してきたが、興味がないかぎりか気分のいいときしか乗り気にならない。
 木村は頭を使うことをめんどくさがっている。 だが、つまらないことには頭を使う。
「すみません、僕が言いますので待ってください。」
 宮田は何度、依頼人に言ったかと内心うんざりしながら、謝った。
 宮田は木村に近寄り、小声で話す。
「何が気にくわない?」
「めんどくさそうだからだ。」
「君はいつもそうだ。 お菓子は何がほしい?」
「コアラのマーチとポッキーチョコ味、パイの実だ。」
「パイの実だけはだめだ。 依頼人の家で散らかるかもしれないからな。」
「なるほど、手をうとう。」
 木村は手を出す。
 宮田は手を出して、握手をする。
 取引成立だ。
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