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33 過酷な運命の真実5
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姫軍師フーカ、宮廷魔法師イワン、そして工事技術者コンクリの3人は高原の調査に移った。今度は獣人族のテイグルが同行した。
ティグルが説明した。
「みなさんが既に見られた森林地帯とは異なり、ここ高原は川も流れておらず井戸を掘っても全く水は出てきません。日常的に水不足の状態で、数日間ごとに像族など獣人の中で力の強い種族が、水を森林地帯から運び上げています。その労力は莫大ですが最小限の水しか運搬することができません。」
「森林地帯より状況は深刻ですね。」
「はい。我々獣人の種族の中では緑が深い森林地帯よりも、このようにほとんど何も無い平坦な場所がすっと続く土地でしか住むことのできない種族も多いのです。」
フーカが真剣な表情で言った。
「よく理解できます。フランツ王国として獣人の皆さんの移住のために御提供した土地ですから、水が乏しく住みにくいのでは大きな責任を感じます。」
考え込んでいたイワンが言った。
「姫軍師様、戦争で使用した亜空間の迷路を使ったらどうでしょうか。さきほど計画された森林地帯の水を調整する湖から亜空間の迷路、今度はただの通路、水路で良いのですが、それを使い水を高原まで送るのです。
コンクリが聞いた。
「水は力の差に従い、高い所から低い所へと流れます。亜空間の中で自然の地形の影響は受けないようにして、魔法の力で、水の入口では高い所の力が働き、出口では低い所の力になるよう設定できるのでしょうか。」
「できると思います。」
「とてもすばらしい考えですね。これから、イワンとコンクリが協力して、森林地帯の水を調整する湖、そこから水を高原に運ぶ水路を造ってください。」
将来の工事計画がまとまろうとしていたその場所に、大変あわてて子猫が急いで駆け込んできた。
「ブルー。」
姫軍師が気づいた。
「このような重要な話の場所に、いきなり入って来るものではないぞ。」
ブルーの父親が自分の娘をきつくたしなめた。
すぐにブルーは少女の姿になって彼女に言った。
「姫軍師様、至急お知らせしなければならないことがあります。」
「そんなにあわてるなんて、いいですよブルー、話してください。」
「ナオト国王様がゴード王国のルル王女と御対面なされ、その場で、陛下が王女を妃として迎えることを約束されました。」
「えっ……………」
フーカはそう言ったきり、その場で黙り込んでしまった。
その様子を見て、周囲の者は思いやり、その場を彼女1人だけにした。
………
(佐藤さん、どうして………)
彼女にはさきほどブル-から聞いたことが、現実のできごとだとはとても思えなかった。佐藤(ナオト国王)と話した時のことを想い出していた………
「北川さん、ゴード王国の国王からの提案とは、国王の娘、ルル王女を妃に迎えてほしいとのことです。」
「えっ。結婚の申し出ですか!!!それで佐藤さんはどうされるおつもりですか。」
「もちろん、お断りしようと考えています。私はこの異世界で4年後に待受ける過酷な運命を、北川さんといっしょに必死で戦わなければなりません。それと………」
「それと?」
「北川さんを差し終えて結婚なんかできません。」
「ありがとうございます。」
彼女は幸せそうな顔を赤らめ、丁寧にお辞儀をしてから謁見の間を出た。
………
「私はこれからの4年間、どのような気持ちで毎日を過ごせば良いの………」
ティグルが説明した。
「みなさんが既に見られた森林地帯とは異なり、ここ高原は川も流れておらず井戸を掘っても全く水は出てきません。日常的に水不足の状態で、数日間ごとに像族など獣人の中で力の強い種族が、水を森林地帯から運び上げています。その労力は莫大ですが最小限の水しか運搬することができません。」
「森林地帯より状況は深刻ですね。」
「はい。我々獣人の種族の中では緑が深い森林地帯よりも、このようにほとんど何も無い平坦な場所がすっと続く土地でしか住むことのできない種族も多いのです。」
フーカが真剣な表情で言った。
「よく理解できます。フランツ王国として獣人の皆さんの移住のために御提供した土地ですから、水が乏しく住みにくいのでは大きな責任を感じます。」
考え込んでいたイワンが言った。
「姫軍師様、戦争で使用した亜空間の迷路を使ったらどうでしょうか。さきほど計画された森林地帯の水を調整する湖から亜空間の迷路、今度はただの通路、水路で良いのですが、それを使い水を高原まで送るのです。
コンクリが聞いた。
「水は力の差に従い、高い所から低い所へと流れます。亜空間の中で自然の地形の影響は受けないようにして、魔法の力で、水の入口では高い所の力が働き、出口では低い所の力になるよう設定できるのでしょうか。」
「できると思います。」
「とてもすばらしい考えですね。これから、イワンとコンクリが協力して、森林地帯の水を調整する湖、そこから水を高原に運ぶ水路を造ってください。」
将来の工事計画がまとまろうとしていたその場所に、大変あわてて子猫が急いで駆け込んできた。
「ブルー。」
姫軍師が気づいた。
「このような重要な話の場所に、いきなり入って来るものではないぞ。」
ブルーの父親が自分の娘をきつくたしなめた。
すぐにブルーは少女の姿になって彼女に言った。
「姫軍師様、至急お知らせしなければならないことがあります。」
「そんなにあわてるなんて、いいですよブルー、話してください。」
「ナオト国王様がゴード王国のルル王女と御対面なされ、その場で、陛下が王女を妃として迎えることを約束されました。」
「えっ……………」
フーカはそう言ったきり、その場で黙り込んでしまった。
その様子を見て、周囲の者は思いやり、その場を彼女1人だけにした。
………
(佐藤さん、どうして………)
彼女にはさきほどブル-から聞いたことが、現実のできごとだとはとても思えなかった。佐藤(ナオト国王)と話した時のことを想い出していた………
「北川さん、ゴード王国の国王からの提案とは、国王の娘、ルル王女を妃に迎えてほしいとのことです。」
「えっ。結婚の申し出ですか!!!それで佐藤さんはどうされるおつもりですか。」
「もちろん、お断りしようと考えています。私はこの異世界で4年後に待受ける過酷な運命を、北川さんといっしょに必死で戦わなければなりません。それと………」
「それと?」
「北川さんを差し終えて結婚なんかできません。」
「ありがとうございます。」
彼女は幸せそうな顔を赤らめ、丁寧にお辞儀をしてから謁見の間を出た。
………
「私はこれからの4年間、どのような気持ちで毎日を過ごせば良いの………」
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