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第五幕
東へ
しおりを挟む「夜明け前に、以前行った石膏の巨岩のところに来い」
六十八は夕食をとり、ぼうっとしていた九十九にそう告げた。
九十九は神妙に頷く。
(――ついにこの時が来た)
覚悟はできている。
「レッセイ・ギルドとして恥じることのない恰好をして来いよ」
そういうと六十八の姿は闇に消えた。九十九は横になっている七十七に話しかける。
「七十七姉。お別れの時が来たよ。今までありがとう――出来の悪い弟弟子でごめんね」
「それ……は……私の……セリフ……だわ……」
七十七の結晶化はクリスタリスの攻撃を直に受けたため急速だった。もう、身体の大半が結晶化し、固くなっている。
喋ることができなくなるのも時間の問題だった。
「九十九……立派に生きる、……のよ」
「俺は掟を破っちゃったからもう、無理だ。師匠とやり合ったら勝てない」
「あなたは……本当に、でき……が悪いわ……わからないの?……」
「――?」
「苦しい。……もう寝るわ……おやすみなさい九十九……」
七十七は目をつぶる。九十九は七十七のいう事がわからないまま、ロサから貰った毛布を七十七に掛けてあげた。
空にはいつもの星が見えない。雲が出るなんて珍しいことだ。
(夜明け前まであと数時間……)
九十九は改めて装備を確認し、ホルダーのプレパラートを吟味すると額の鉢巻きを結び直して息を吐いた。
あと数時間後に、師との戦いが待っている。
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