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133 ステファン視点⑨
しおりを挟む職人に金を払って来てもらい水路の整備をするんじゃなくて、俺自身が土を掘って石を組んでセメントを練って水路を作れば人件費はいらない。
そしたら他の問題解決に金を回せる――
そんなのは貴族じゃないと何度も止められた。
両親は卒業と同時に強い後ろ盾、要するに金のある貴族の令嬢と俺を結婚させて領地に金を工面させようとしてた。
――まあ、顔だけが取り柄だったからね。
昔の貴族ならそれで良かったんだろうけど、これからはそれじゃ駄目だ。そんな古いやり方を続けたところで、相手方の金が尽きたら一緒に破産一直線だし、自分達の抱えてる領地そのものの経済力が低いままじゃ何も変わらない。
そう言って見合いも茶会も一蹴した。
――それに俺はアディ以外の妻はいらない――
毎日奔走して領民達が食うに困らなくなって来たのが卒業してから3年目。
やっと領地が潤って来て。
経済が回り出した事が肌で感じられるようになって領地の空気が変わった。
銀行の融資が通ったことを皮切りに一気に領地が潤い出したのを見て、俺のやり方を最初は反対していた両親も口を一切挟まなくなった。
一切見向きしてないと思っていた国からも、今迄の貴族のやり方では無く自ら畑を耕し水路を引き領民の識字率を上げて領地に貢献していた俺自身の動き自体をちゃんと把握していたみたいで、伯爵位を俺に譲渡して隠居を奨める旨が書かれた書類が父親に送られてきたのには正直驚いた。
本当に昔のやり方の貴族を切り捨てて、この国自体が変わろうとしているのかもしれないと思い、少しだけ背筋が寒くなった。
自助努力できる貴族以外は貴族家として存続させるつもりが無い事を仄めかす文章は、自分が努力して来たことは間違いじゃなかったと安心した反面、それなら学びの場で何故それを貴族の子息子女に指導しないのだろうかと正直首を捻ったが、多分そういうことじゃないんだろう。
自分で気付いて動けという事か、と。
読み終わった後で立派な封蝋を押された封筒を眺めていて気が付いた。
国は本気で変わるつもりだ。
これからの貴族に対する国からのプレッシャーは考えるだけで憂鬱なことになりそうだなと苦笑いをした。
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