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111 サーシャ視点⑬
しおりを挟むエイダン・オルコット伯爵は、オルコット商会の会長でオルコットグループの会頭だ。
6年前に学園の渡り廊下を歩いていく無愛想な雰囲気の彼の腕の中からひらりと落ちたレポート用紙を拾ってから顔を知っただけで、自分がなりたかった理想の騎士のような体格をした人で、殴られて怪我をした時に貸した私のハンカチのお礼にと、新しいハンカチと甘いキャンディーをくれた先輩。
そして卒業間際まで図書館でひたすら何かを勉強していて出会って半年もする頃には卒業していなくなり、その後で高等科に進んだ時に伝説の英雄のように囁かれていた人だった。
それと。
出会ってから6年間毎日夢の中の図書館で会う人でもあった。
家からの迎えが来るまでの間、図書館で本を読む時間にそこに先輩が座っていようがいまいが、平日の何時もの風景だからそれと同じ状況を夢に見た所で気にするわけもなく、目が覚めたらいつの間にか忘れてしまう程度の夢だった。
それが。
卒業後、オルコット商会に就職して学生だった彼の姿は今現在の姿に変わり、夢の中で会話までするようになった。
×××
以前、この国では貴族女性の仕事と言えば婚姻で他家と縁を結ぶ事だった。
女性は皆20歳を超え、24歳になる頃には行き遅れ等と失礼な事を言われてた。
そんな女性達ができる仕事といえば家庭教師。
高位貴族や王宮の侍女やメイド。
その程度しかなかったのだ。
貧乏な貴族家は娘を口減らしのために売るように扱っていた。
より金持ちの第2、第3夫人や愛妾は当たり前で、本当に花街の娼館に売られる事も当たり前にあったらしい。
それは本を正せば30年以上前の国同士の戦争が原因で、貴族達から高い税を徴収して王家が戦争を続けたその代償だ――
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