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95 サーシャ視点⑦
しおりを挟む「ホントにもうッ」
怒りながら辻馬車溜まりに向う道を歩いて行く。
朝だというのに夏の日差しが暑く感じて、ブラウスの首の辺りが汗でじっとりとしてくる。
×××
カイン兄さんは、私が学生の時に会長を英雄視してベタ褒めしていた事が未だに気にいらないらしい。
オルコット商会は給料もいいし、福利厚生が整っていて安心して仕事が出来る事が有名で、特に女性は結婚後申請さえすれば子供が生まれた後でも商会の経営する託児所を紹介されてそのまま働けるらしくて人の入れ替わりが少ない。
その為女性の新規雇用枠がすごく少なくて入社試験時も競争率が嫌というほど高かったのだ。
狭き門を掻い潜り入社できた事を知った時は嬉しくて飛び上がり、ベッドの上で跳ね回って母に怒られた。
曰く、
「ベッドの足が折れる」
だったけど―― 酷い。
入社前説明を受けた時の面接官から、最初は庶務課から始まり適性を見てから違う課に異動することになるかも知れないと説明されていたのだが学園の成績が良かったのか経理課にいきなり抜擢されたのに驚いた。
でも、もっと驚いたのは社長だけじゃなく経理は会長の仕事の一部も任されるので挨拶があるとマネージャーに連れられて会いに行った事。
しかも場所が面接の時に事務所の倉庫? と思ってた場所だった。
え? 会長室ってこんな場所!?
しかも会長の机も秘書のチャーリーさんの机も会長室じゃなくて事務所の中じゃん!?
会長職ってもっと踏ん反り返ってるイメージしかなかったので驚いた。
普通の社員に会長が混ざって仕事してる・・・
社長は最上階なのに?
でも理由は直ぐ判った。
会長室が荷物でいっぱいだ。
きっと机がはみ出したんだ・・・
しかも出社しても直ぐ外回りだし、ほぼそのまま帰ってこない。
そうか。
だから机なんてどこでも良いのか・・・ 成る程。
納得した。
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