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 「どういう事なの?」


 応接室に入るなり、アデラインが眉を下げて質問してきた。

 俺とクリスは、お互いの顔を見て、何処まで話して良いのかわからなくて首を傾げる。


 「落ち着いて下さいバーンスタイン侯爵夫人」


 クリスがよそ行きの言葉を急に使った。

 普段彼はアディの事を義姉さんと呼ぶので、この話し方はビジネスモードだ。


 「アデライン、君の言う『どういう事』がどの事を指しているのかが分からないんだ」


 クリスに倣うように、俺も口調を丁寧にする事にした。

 アデラインは焦りすぎてる。


 「ごめんなさい、新聞記事の事よ。何故あれ程騒いでいたのが謝罪文に変わったのかを知りたいのよ。あなた方が何かしたの?」


 彼女が知りたい事は、正直我々も正しくは理解できてない――


 「新聞社の謝罪文に関しては私達は完全に無関係だよ」


 弟が肩をすくめた。

 どっちかと言うと情報を漏洩させたのはクリスだから確かに嘘じゃないな。


 「じゃあ、浮気相手の女性の事は?」

 「知り得た情報はあるよ。ただ、本当に男爵家が訴えた事で分かるように、その女性はその家には存在してない」

 「嘘よッ、だって・・・」


 ボロボロと涙を流すアデライン。

 彼女が取り乱す事なんてこないだの侯爵邸で初めて見た位で、3年一緒にいたのに正直この短期間に2回見るなんて信じられなかった。


 ああ、やっぱり彼女はステファンを愛してるんだな――


 「社長、会長、お客様です」


 ノックと共に今度はサーシャ嬢の声がした。


 「・・・ 今度は誰だ?」

 「それが・・・」


 何か廊下が騒がしいんだが?

 嫌な予感しかない・・・






 「アディ! 見つけたッ!」


 何故か俺の第1秘書チャーリーを腰にぶら下げたステファン・バーンスタイン侯爵が入口に立っていた。


 おい、ここは会社だぞ!?


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