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65 弟の溜息

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 「義姉さんも社交界で『おしどり夫婦』って言われてたままで離婚を選ばずに大人しくしてくれてりゃ良かったのに」


 弟は溜息を付きながら、窓際からソファーへ移動した。

 肘をついて俺を見上げる彼の容姿は義母に似ていて少し幼気に見えるが、経営者としては父に似て厳しい所がある。


 「まあ、それスキャンダルもある意味我が社の宣伝になるけどさ? 今回のは洒落にならない。呼ばれた訳じゃないのに侯爵家にまで乗り込んじゃって、義姉さんを掻っ攫って連れて出ちゃってさ。ほんとに世話のやける・・・ 実家に連れて行っただけで済んで良かったよ。行き先が兄さんの自邸だったらどうしようもなかったからね」


 そのまま上目遣いで睨む弟。


 「スマン」

 「まあ、誠実で正義感が強いから兄さんが取引先から信頼されてるのは分かってる。それがあるから今の商会が存在るんだ。そこは感謝してる。でもウチは昔の一商会じゃなくて既にでかいグループなんだから慎重にね」


 言い終えてから、はぁーと溜息を大げさに付き眉間を揉んだ弟。


 「義姉さんは長い事付き合いがあるから兄さんも情も湧いたんだろ?」

 「ああ。まぁ友人だしな」

 「でも、相変わらず『恋愛が分からない』んデショ?」

 「クリスのように女性相手に気持ちがんだ。アディは一番長い付き合いだから家族以上には情もある。それは間違い無い」


 「俺を引き合いに出すのはヤメテね」


 弟の額がピクリとした。


 「わからんもんは仕方ないだろう」

 「モテるくせに」

 「? そんな覚えは無いぞ?」

 「イッカイウマレナオセ・・・」

 「なんか言ったか?」

 「ナンデモナイヨー」
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