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12 結婚式の夜

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 結婚式の後――


 「君を抱くことは出来ない。ごめん」


 初夜に俺が彼女に言った言葉。



 「親友の想い人だから」


 「貴方達が何か約束してる事は薄々知ってたの。でも・・・」


 伏せた瞼の下に影が出来る。

 長くて綺麗な睫毛だな、と思った。

 そう言えば初めて会った時もそう思ったんだっけ、と今更ながら進歩のない自分がおかしくて笑いそうになった。


 「何笑ってるの?」


 むくれた彼女の顔が可笑しくて、又笑いそうになる。


 「君の睫毛が綺麗だと、また思ったんだよ」

 「また?」

 「俺がアイツに殴られた時に君が慌てて飛んで来ただろ? あの時君の睫毛を見て綺麗だなって思ったんだよ」

 「ねえ、それ口説いてるの?」


 口を尖らした彼女は美人なのに可愛い。


 「いや? どうだろ。君は綺麗だし俺には勿体ない位魅力的だよ。俺だって男だよ? 正直に言うと妻になった君に触れてみたい欲はある。でもきっと抱けない。アイツに5年待ってくれと頼まれてるし、そもそも君も割り切れて無いだろう?」


 図星だったようで、彼女は狼狽えるように視線が泳ぐ。


 「婚約してからほぼ会わなかった男にいきなり純潔を捧げれるか、コノヤローって思ってるだろ? 君は気が強いからね」

 「なななっなんでッ?」

 「アイツに聞いたし、学生の時のデートで知ってた。猫被ってたろ?」

 「・・・でも私、腹を括ったのよ」

 「全然だろう? 誓いのキスを避けたでしょ? 周りからは見えなかったみたいだから良かったよ」

 「・・・だって」
 
 「あのままじゃ君は後妻に虐げられて食事もマトモに取れなくて栄養失調になって倒れてただろう」

 「! なんで知ってるの?」

 「調べた。妻になる相手の事を調べるのは当たり前だろ」


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