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♡神の手を離れる時

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「おい、追ってた獲物は何処に行ったんだよ」


 仲間の苛立つような声に頭を横に振る魔法使い。


「わからん。唐突にこのまままっすぐ進んだあたりで気配が消えたんだ。見失ったんじゃなくて唐突に消えたんだよ。長い事索敵やってるがこんなの初めてだ」


 残念そうに肩を竦める魔法使いに、顰めっ面になるリーダーの盾役。


「この先でなんかあったってことか?」

「多分。索敵魔法を遮る結界みたいなモンがあるなら俺でも見つけられん」

は手負いだ。逃したら不味いだろう」


 取り逃がしたのは大きな熊で近隣の村に出没し、家畜を襲うため討伐依頼が出されたものであり、彼等が仕留め損ねて取り逃がした。
 熊は怪我をしている為凶暴になり、被害が広がる恐れがあった。


「とにかく、先に行ってみるぞ。獲物が死んでたら、それはまぁそれで依頼達成だからな。確認しないと・・・」


 そう言いかけた時、進もうとした先から奇妙な音がした。

 例えるなら、土の上をゆっくりと丸太を引き摺るようなズリズリという鈍い音だ。


 彼等は、首を捻りながら柴草をかき分け進もうとしたが、目の前に広がった景色を見て声を失い後ずさる。


「やべえ、魔素溜まりができてやがる・・・」


 まるでコールタールのような粘り気のある大きな黒い膨らんだパンケーキのような沼地。

 風が突然吹き荒れ、辺りに腐臭が漂う。


 沼地の真ん中には彼らの獲物であったはずのデカい灰色の熊が、だらし無く舌を口から垂らし白目を向いて横たわっていた・・・

 その身体は瘴気の沼に半身が浸かり溶け始めた身体の隙間から白い骨が見えていた。


「撤退だ」


 全員が全速力でリーダーの指示に従ったのは、言うまでもない・・・


 
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