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2章
31③
しおりを挟む「わかりましたわアルフレッド様。私、ミュラー家の税に関する訴訟を起こしますわ。
その様な国の怠慢を許すのは貴族家そのものを蔑ろにする行為に他なりません」
「「はッ?」」
いきなりの訴訟宣言に驚くのはアルフレッドとロザリーである。
「いや、あの爵位返還でも良いんですが」
オロオロとするアルフレッドに追い討ちをかけるように語るリリーベルは
「駄目ですわッ」
そう言いながら、キッと目を吊り上げて正面のアルフレッドを睨むように見つめる。
「ロザリーとオリビアは我が侯爵家の護衛騎士ですが、アイラ様とノーマ様は栄えある王家の近衛騎士。
しかもこの国初の女性騎士なのです」
「ええ、確かに」
頷くアルフレッド。
「ただの王国騎士ならともかく御実家が平民では近衛を続けられ無くなりますわ」
「・・・・・・確かに」
言われてみればそうである。
「彼女達はこの国、いいえ他国においても女性の地位向上の良い旗印、いわば偶像、そして目標とされているのです。
ご存知ないかもしれませんけれど」
「そうなのですか?」
「ええ、私は王子の婚約者として、各国の代表や外交官と接する機会が多かったのです。
その折に彼女達のお陰で女性外交官が増えたという話題をよく耳にいたしましたの」
この世界は一夫多妻の国が多い。
それは人族の子供が育ちにくい事に起因しているのだが、それ故に子を産む道具のように女性を扱う国は未だに多いのだ。
「彼女達は女性でも能力が高ければ男性と同じ立ち位置で働けるし、意見も述べられるのだという希望の星なのですわ。
この国は他国に比べると遥かに人族が生きやすい国ではありますが、だからといって他国の女性達が男性に子を産む道具のように扱われる謂れは無いのです。
だからこそミュラー家の御二人には目立つ所にいてもらわなければ駄目なのです」
思いもかけない意見を言われてビックリ仰天のアルフレッド。
いつの間にか妹達がウーマン・リブ運動のプロパガンダになっていた事にも驚いたが、何よりも自分自身のことだけでなく広い視野で物事を判断できる彼女に驚いた。
『流石は元王子妃候補だな・・・』
美しいだけではない、リリーベルの強さを垣間見た出来事だった――
~~~~~~~~~~
豆知識╰( ・ ᗜ ・ )➝
プロパガンダ→特定の主義・思想についての(政治的な)宣伝。
ウーマン・リブ運動→女性解放運動の一種
で、社会の風潮や男性からみた「女性像」「女性のあるべき姿」からの開放を訴えた。
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