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2章
25③
しおりを挟む「おう、ミュラー伯殿久しぶりだな、元気だったか?」
大勢の冒険者が座る席の間をウェイトレス達が笑顔を浮かべながら通っていく。
大ジョッキを片手で手で3つ、両手で計6個を軽々と持ったまま行き交う彼女達の姿を横目に、ドリンクバーのすぐ脇にあるカウンター席に目的の友人の姿を見つけたワイス辺境伯は彼の真後ろまで近付き声を掛けた。
「お。辺境の! 元気そうで何より」
短髪のやたらガタイの良い男が振り返り、彼の呼びかけに応えた。
エールの入ったジョッキを片手に飲んでいたようで口元に泡が薄っすら付着しているこの男、アルフレッドの父ダンカン・ミュラー伯爵だ。
辺境ではめったに見られないような華奢な体付きに簡素なワンピースを着た艶っぽい美しい女性が彼の隣に座っていて彼と同時に振り返る。
此方はアルフレッド達の母、エリーナである。
「やあ、珍しい。エリーナ夫人も一緒ですか」
髭面の辺境伯の言葉に彼女はニコリと笑顔を見せた。
「長男がやっと領地に帰って来たから偶には良いかなと思って討伐に着いて来たの。貴方も元気そうね」
「いやはや相変わらず仲睦まじいな~羨ましい」
ハッハッハと最近白いモノが交じり始めた頭に手をやりながら、まるで好々爺の様に彼は朗らかに笑った。
「でな、ギルドに手紙が届いたらしいんだが。お前宛に」
辺境伯から白い封書を手渡されるミュラー伯爵。
「何でお前がギルドに届いた俺の手紙を持ってくるんだよ?」
「宛名だよ」
「「ん?」」
封筒の宛名は
【ミュラー伯爵家当主ダンカン・ミュラー宛】
になっていた。
「「・・・・・・」」
冒険者ギルドの登録名は基本的にパーティ名と本人の名前で届けるのだが、アルフレッドはパーティー名ではなく父親の名前と地位を書いていたのである。
「どうも誤配送だと思われたらしくてな、俺の邸に回ってきたんだ」
「あ~・・・そういえば息子にパーティー名を教えて無かったわ」
「あら、そういえば」
夫婦二人が顔を見合わせると苦笑いした。
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