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1章
17④
しおりを挟む各王族に対する個人資産の在り方や、公費の見直しなどを帳簿上から考察するんだが、王妃の帳簿に明らかにおかしな金額のものがあった。
――俺は母に対して疑惑があったから気がついたのかも知れないが。
成人済みの王族は有力と認められた臣下に対して個人名義で季節毎の挨拶としての贈り物をする項目があるのだが、母上は貴族家に毎年茶葉を贈っている。
その中でヘイワード家に送る茶葉だけがやたら値段が高いのだ。
明らかに普通の高級茶葉の金額ではない――
そう思った俺は側近候補だった侯爵令息、宰相の次男にその事を調べさせてみた。
アイツは寡黙な上に口を開くと毒を吐く奴だが、情報収集能力に長けていて独自の調査機関を自分で立ち上げてる。
末恐ろしいとは思うが宰相の家は代々そういうのが得意らしい・・・
話を戻すんだけど、北方地域で取れる薬茶で墮胎を含む不妊の処置に使われる貴族向けのモノがあるらしくて、どうやらソレをブレンドした茶葉を毎年恒例の新茶の時期に母がヘイワード侯爵家に贈っていたことが分かったんだ。
しかも残りは母の実家のサディス公爵家に送り届けていて、そこから秘密裏に使用人に持ち出され持ち込まれていく先がヘイワード家だったのだ・・・
俺は事実を突き止めた宰相の次男を側近に取り立てた上で、口止めをした。
母上の目論んでいる事はどう考えても貴族家の王族による乗っ取りだ。
リリーベルと俺を婚姻させる事によってヘイワードの資産を王家の財産にするつもりなんじゃないか?
若しくは母の実家のサディス公爵家がしゃしゃり出るか・・・ そんな所だろう。
他家の乗っ取りは貴族法で禁止されている。
たとえソレが王家だったとしても同じだ――母上はソレすらも考えが及ばなかったのだろうか。俺は悲しくなった。
1か月後。
秘密裏に作っていた報告書と計画書の両方を携えて、意を決して国王の執務室のドアを俺は叩いた。
結局、何度も何度も秘密裏にヘイワード侯爵とリリーベル、陛下と兄と俺、そして宰相の6人で話し合いの場が設けられる事となった。
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