【完結】美貌の男はお好きですか？それが例え悪魔でも？〜悪魔のお嫁様〜

２１ 辺境伯からのお誘い

　王都の綺羅びやかさに全くもって興味のない一家を載せて、辺境にある小さな領地からその馬車は出発した。

　予算削減のために身の回りを世話してくれる侍女のマーサと侍従１人を連れて、毎年の参加を義務付けられている辺境伯の護衛を当てにして共に王都に向かう事となった。


「息子が迂闊な事をした。済まない」


　と、辺境伯は急な王家の呼び出しに小さな領地で資金繰りに四苦八苦していたシルフィールド一伯爵邸にやって来て唐突に頭を下げ、一緒に王都へ向かうように勧めてくれた。

　そればかりか王都での宿泊は辺境伯のタウンハウスの客間を使うよう彼から申し出をしてくれたのだ。


　散々家の中にあった金目の物を売り払い方策尽きて頭を悩ませていたシルフィールド一家は、ありがたく辺境伯の誘いを受けることに決めた。


　ガタイの厳つい辺境伯の豪華な馬車には、何故か顔が腫れ上がり形が多少変わってしまったように見える嫡男デニスが乗っていたようだが、シルフィールド一家に一切近づかない様、騎士達に厳重に見張られているようで道中顔を合わすことは皆無だった。


　――辺境伯の言った通り、多分今回の突然の参内騒ぎの犯人は彼なのだろうな、と全員が遠い目になった。

　取り敢えず、嫡男デニスに関してシルフィールド一家とその召使い達は、何も見ていない事にしようと全員一致で決まったのは余談である。


『でもこうなったのは、元を正せばキアンが夜会に行って来いと言ったせいじゃないかしら？』


　ガタゴトと進む馬車の中で不快な揺れに気分を悪くしながらアリアはこの場にいないキアンに心中で文句を言っていたが、両親である伯爵夫妻がいらないものの処分も捗ったと、呑気に笑い合っていたため、彼女は押し黙って過ぎていく景色に目をやったのである。