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13 女神の呼び出し

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 命を助けた対価として、仲介者である森の賢者に『婚姻』を勧められたらしいが、当時私が4歳の子供だったせいなのか、それとも結婚自体が嫌だったのかは分からないけれどそれは保留になったらしく、私が20歳になる迄は領地の端っこにある迷いの森とは真反対の山の中に家を構えて暮らす事を望んだらしい。

 以来彼はその場所に住み着き、偶に我が家を訪問してくるようになった。

 私が幼い頃は屋敷の敷地内にある別邸に住んで人の世のことを両親に習っていたらしいが、その頃の事を私自身はあまり覚えていない。

 キアンは私に、好きな男性が出来たならそれでも良いと言ったスタンスらしく、そっけないところがあって、私がどんなに美しく装ってもキアンは決して美しいとは言ってくれないし、愛の言葉を囁いてくれた事は一度も無くいつも子供扱いで、つむじや額にキスをするだけだ。


 家族と一緒で保護者のよう。


 まるで自分の子供のように可愛がってはくれるけれど私はそれが凄く不満だ。

 悔しいので甘えて縋りつくとお転婆だと笑われる始末。

 コレでも淑女としての教育をきちんと受けた身だし、もう結婚だって出来るのだ・・・キアンさえ受け入れてくれれば私は、いつでも彼のお嫁さんになるって決めているのに・・・――






 今日も顔が良いキアンを横からうっとりと眺めていると耳を疑うような言葉が聞こえてきた。


「隣国へ暫く行ってこようと思う」

「キアン殿? 何故隣国へ?」


 お父様が不思議そうな顔をした。


「昔なじみの女神が隣国で呼んでいるらしくてな、俺がことに気が付いて相談に乗って欲しいと連絡が来たんだ」


 女神・・・ですって!?


 ――それを聞いたアリアの表情が無になる。 
 隣り合わせに座るキアンは気が付かないが・・・――


「そうですか、どのくらい隣国に行かれるのですか?」


 伯爵が眉を下げて聞くと、顎に手を当て少しだけ考えてから、


「分からんが、多分あちらの気が済むまでといった所だな。解決する内容とは限らん」


 肩をすくめるキアン青年の横で、鋭い目付きになるアリア。 
  
 両親は揃って愛娘を生暖かい眼差しで見ていたが、アリアの心中はそれどころでは無かった。


「いつお発ちになりますか」

「今晩だ。ちょっとばかりかされているからな。あいつら昔から気まぐれで叶わん」


 そう言って彼は何時ものようにカラカラと笑った。

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