【完結】真実の愛はこちらです〈完結短編全集〉

hazuki.mikado

文字の大きさ
上 下
5 / 38
17番目の姫君と盗人

しおりを挟む

 後宮での綺羅びやかな舞いや音楽に興じ、食事を済ませて回らない頭で夜伽を命じる皇帝を、閨へと通して更に酒に強い酒精を投じた物を勧め最早無くなった小国の夜伽の作法であるとだまして、呂律も頭も回らなくなった皇帝を寝具の上に寝転して後宮の姫達がよって集って馬乗になり皇帝の上で愉しんだのはまあ、仕方ないであろう。

 余りに泥酔していて、人数がおかしい事にも気が付かない彼を後宮の姫君たちは心の中で嘲笑っていたに違いないのだが、翌日二日酔いで政務もこなせぬ程にヨロヨロになった彼に向かって、


「まあ、お盛んでございます事、それ程までに気に入った寵妃なら直ぐにお子を身籠りますわね」


 と扇で顔を隠しながら、白けた顔で言い切って、本宮に追い出したのは後宮の主である皇后である。

 そして無事にたったの一夜で身籠った小国の姫君は二度と皇帝と閨を共にすることは叶わなかった。


 彼女は出産と同時に儚くなってしまったからである。


 それは彼女が望んだ結末では無かったが、後宮の主である皇后と側妃に己に瓜二つの幼い姫を託すに相応しい人々であると彼女自身が今際の際で認識していた事なので、彼女の死に顔は安らかであったという。


 皇帝は手に入れた美姫を失い嘆き悲しんだが、皇后と側妃達は


『元々、貴方のせいなのでは?』


 と腹の中で思っていた。

 手にしたモノはいつかは失うのが世の定め。

 ソレが早いか遅いか其れだけの事である。





 だが、美しく聡明な妹を失った事を皇后と共に嘆き後宮はその後120日の間、喪に服した。


 それ程までに魅力的で賢い姫だったのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...