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17番目の姫君と盗人
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しおりを挟む後宮での綺羅びやかな舞いや音楽に興じ、食事を済ませて回らない頭で夜伽を命じる皇帝を、閨へと通して更に酒に強い酒精を投じた物を勧め最早無くなった小国の夜伽の作法であるとだまして、呂律も頭も回らなくなった皇帝を寝具の上に寝転して後宮の姫達がよって集って馬乗になり皇帝の上で愉しんだのはまあ、仕方ないであろう。
余りに泥酔していて、人数がおかしい事にも気が付かない彼を後宮の姫君たちは心の中で嘲笑っていたに違いないのだが、翌日二日酔いで政務もこなせぬ程にヨロヨロになった彼に向かって、
「まあ、お盛んでございます事、それ程までに気に入った寵妃なら直ぐにお子を身籠りますわね」
と扇で顔を隠しながら、白けた顔で言い切って、本宮に追い出したのは後宮の主である皇后である。
そして無事にたったの一夜で身籠った小国の姫君は二度と皇帝と閨を共にすることは叶わなかった。
彼女は出産と同時に儚くなってしまったからである。
それは彼女が望んだ結末では無かったが、後宮の主である皇后と側妃に己に瓜二つの幼い姫を託すに相応しい人々であると彼女自身が今際の際で認識していた事なので、彼女の死に顔は安らかであったという。
皇帝は手に入れた美姫を失い嘆き悲しんだが、皇后と側妃達は
『元々、貴方のせいなのでは?』
と腹の中で思っていた。
手にしたモノはいつかは失うのが世の定め。
ソレが早いか遅いか其れだけの事である。
だが、美しく聡明な妹を失った事を皇后と共に嘆き後宮はその後120日の間、喪に服した。
それ程までに魅力的で賢い姫だったのである。
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