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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡

17話 階段でドッキリ!

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 皇城のロータリーから城の入り口迄続く道は、幅広の長い階段が優美な曲線を大きく描きながら続く形になっているのが特徴である。

 敵の侵入に時間をかけさせる目的でこういう形なのだそうだ。

 先ず護衛の2人が馬車から降りると、次に皇帝のグエン、そしてシンシア王女が彼の差し出された手を取りながらエスコートされて降りてくる。

 階段の周りには帝国の重鎮達と衛兵がズラリと並んでおり、ちょっと見は物々しい雰囲気である。

 夜会の始まりにはまだ時間に余裕もあるため皇帝陛下と共に先ずは控室へと通される手筈となっていた。

 所が、である。

 長い階段をエスコートされてゆっくりと登るのを遮る人影が・・・ 言わずとしれたロザリア皇女であった。


 「お父様。ごきげんよう」

 「おう。どうした、また訓練から抜け出したのかお前」


 行く手を塞ぐように仁王立ちになる皇女。


 「何でそうなるのよ! 夜会なんだから訓練なんか休みに決まってるでしょ!」


 そういえばそうだった。

 うん。

 この人一応皇族ですやん。

 確かに皇室主催の夜会なんだから、参加するの普通かも。


 「別に参加しなくてもいいんだぞ? 強制じゃねえし」


 だか、実に自由な皇帝陛下としてはその辺りはどうでもいいらしい・・・


 「何言ってるんですか、せっかくサボ・・ げふん、歓迎のための夜会なんですから出席に決まってますでしょう! 相手国のハイドランジア王国に失礼ですわよ!」


 どうやら訓練をサボる為の大義名分みたいである。


 「いや、お前が出席するほうが失礼になる可能性は無いのか?」

 「ないに決まってるで・・・・ まぁ、いいですわ」

 「俺は良くねえんだが。ま、いいか」


 ここまで。

 実に皇族らしくない会話である・・・と思うんだが。まあいっか←


 「私もご一緒に控室に参ります」

 「邪魔するなよ。あとリンダはどこ行った?」


 首を傾げるロザリア皇女。


 「知りません」

 「そんなわけねえだろよ」


 さては撒いてきたな?! と察する陛下。

 はぁ、と溜め息を吐くと下から追いかけてきた宰相閣下達に向けて、


 「リンダ・テレッセ伯爵令嬢を連れてきてくれ。皇族の控室な」


 そう言うと、ハイドランジアの一行に目を向けた。

 護衛の2人はチベットスナギツネのような顔になっている。


 そしてシンシア王女は


 「まあ、はじめまして」


 そう言いながら軽くカーテシーの構えで顔は上げたままニッコリと微笑んでいた。


 「皇女様、ワタクシはハイドランジア王国から参りました、シンシア・ハイドランジア第2王女で御座います。宜しくお願いいたしますわ」


 そう言いながら妖艶さを湛えた微笑みを披露する。


 「あわっわ、私はロザリア・トリステス第1皇女ですわ。今後とも宜しくですわっ」

 「おい、ロザリア、何でお前顔が赤いんだよ?」

 「な、何でって。顔なんか赤くないですわっ暗くてそう見えるんでしょう!」


 そう言い繕うロザリアだが、明らかに顔が赤くなっているのは誰の目にも明らかであるのだが・・・・


 何故かアワアワしながら控室までやってきたロザリア皇女はソファーに座り、皇帝陛下と笑談するシンシア王女を遠巻きにチラチラ眺めている。


 ハイドランジアの騎士と魔術師の2人はドア前で護衛と言う名の待機中である。


 『どうしたんですかね、アレ?』

 『俺に聞くな。わからん』


 コソコソとドア前で囁やき声で会話する護衛役。


 『シンシア様は顔がミゲル様に似てるからですかね』

 『・・・・・・』


 魔道士の白いマントのフードをスッポリ被ったミリアが


 『念のため、認識阻害の魔法掛けといて良かったですね・・・?』

 『・・・まあな』


 一定の距離迄近寄らないと顔がわらないよう認識阻害の魔法をミゲルは常時発動している為、離れて見る分には完全にモブである。

 流石にダンスをする様な距離でピッタリ近寄って覗き込まれるとバレてしまうが。

 因みにミリアは色変えを発動中は認識阻害の魔法とかは無理である。不器用なので・・・()

 誰かがドアをノックした。


××××××××××


 入ってきたのは緑色の騎士服を着た女性である。

 茶色い長い髪を一括に纏めて後ろに流していて、メガネを掛けている。


 「おう、リンダ。ロザリアが夜会に出席するらしいから、お前見張っといてくれ」

 「承知いたしました」


 リンダと呼ばれた女性騎士は皇帝グエンとシンシア王女に騎士の礼をすると、音もなく移動してロザリア皇女の真後ろに立つ。同時にボーっとハイドランジアの王女を眺めていたロザリアの背筋がピシッと伸びた。

 彼女の耳元で女性騎士が何かを囁いた途端、ロザリア姫の背すじが更にピシッと伸び、引き攣ったような笑顔が浮かぶ。


 急に姿勢が良くなった彼女に首を傾げるハイドランジア側の3人である。


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