【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado

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148 バングル 〜マーサ視点あり

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 寝台の上でグッスリ眠るリアーヌの頬にキスをしてから、部屋のドアをそっと開けて隣の部屋に出た。


「さて、と」


 宰相から届いた手紙はレイモンドがこの屋敷に初めて帰った当日に見かけたの正体についてであった。


「マーサ」

「はい、旦那様?」


 主寝室の隣にあるに設置された専属侍女の待機部屋を覗くといつもの様に浅葱色の髪をキッチリ結い上げたマーサの姿。


「どうやらカザフ帝国にリアーヌと殿下の婚約解消がバレちゃったみたいでねえ。

 面倒事が起きそうなんだよ。

 あの二人は気づいてなかったけどお互いが『防波堤』だったから、ソレがなくなっちゃったから色んな横槍が入って来ると思う。

 まぁリアは僕の奥さんだから、こっちに被害が及びそうなら事前に食い止めるけどね」

「・・・ さようで御座いますか」

「リアの身辺の護衛を増やす必要は無いけど、彼女のお気に入りのフロイライン嬢が気になるかな。

 今はハンスが付いてる?」

「はい。護衛として」


 マーサの答えに頷くレイモンド。


「殿下が帝国の皇女に気に入られちゃったみたいなんだよ。

 どうやらその子が帝国の魔女なんだけど屋敷に初めて帰って来た日の夕方この付近を彷徨いてたのを見かけたんだ。

 殿下がリアとフロイライン嬢のしてるのがその皇女に知られたら面倒事が増えるかもしれないから、一応気を配っといてくれる?」


 そう言いながらレイモンドの差し出した手の平には透明な魔石が嵌め込まれた金属製のバングルが浮かんでいた。


「コレと、同じモノだから。

 君に渡しとく」


 彼はリアーヌの護符のネックレスと連動している自分の中指にはまる指輪を見せると


「青はまだ余裕があるけどね。

 黄色や赤く光る時はリアに危険が迫ってるって思ってくれたらいい。

 まぁ光らないのが一番なんだけどね」


 そう言いながら彼はバングルをマーサに渡すと、


「じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさいませ」


 受け取ったマーサが頭を下げる。

 それを確認し、いい笑顔になると彼は夫婦の寝室に戻って行った。



 ×××



 レイモンド様は不思議な方だ。


 ――お嬢様の次くらいだけれど・・・


 お嬢様があのクs・・・ゲフン、殿下と婚約した直後に突然お嬢様と友人になったと言って公爵邸に現れた。

 コンフォート邸に隣接する侯爵家の嫡男で、それまでは一切面識は無かったのだがその日から彼はお嬢様の部屋にちょくちょく転移魔法を使って現れるようになった。

 ハンス並みに魔力をお持ちで、しかも7歳くらいの頃からロイド様の弟子だったというのには驚いた。

 あの全身どころか脳内まで筋肉の御方がリアーヌお嬢様との婚姻を全く反対せずに寧ろ後押ししたのだから、剣の腕前も相当なのだろう。


 なのに全くそれを感じさせず、いつも風に吹かれる柳のように飄々としているように見える。

 宰相府ではどういった仕事振りなのかを見てみたいものだと思ったのは一度や二度ではない。

 真面目にやっていなければとっくに左遷されているのだろうけれど・・・


 周りに友人らしい友人を作ろうとしなかったお嬢様が、レイモンド様にだけは心を許していたようで彼と一緒にいるときはいつも楽しそうだった。


 一人っ子のお嬢様は彼を兄のように慕っていたようにも思う。


 それと王子殿下の恋人だと思われていた男爵家のご令嬢のフロイライン様。

 彼女もかなり変わった・・・ いや、奇妙なというべきだろうか? 方だと思う。

 時々お嬢様とは姉妹なんじゃないかと錯覚する事がある位お嬢様と同じがするのだ。

 彼女が現れてから何故かお嬢様は大人の様な仮面を被るのを辞めてしまい、子供に戻ったような屈託のない笑顔を見せるようになった。

 それはレイモンド様と一緒にいる時も同じだ。

 殿下と婚約していた頃は、淑女の仮面を被り何かを警戒していたような気がするが今は少女の様にレイモンド様に甘え、フロイライン嬢と一緒に楽しそうに笑う。

 子供の頃から何かしら切迫したような生き方をしていたお嬢様が何の憂いもなく幸せそうに笑えるようになったことは喜ばしいことだと思う。
 あのお二人の存在が今の幸せそうなお嬢様を支えて下さっているのは間違い無い。

 まぁ、レイモンド様はとうとうお嬢様の伴侶になってしまわれたから当然だが――


 先程受け取ったバングルはお嬢様の護符と連動しているとレイモンド様が仰っていたが、そのようなものを私に渡さなければいけない位の『何か』が起るのかもしれないが、全力でお守りするのは今迄通りではある。


 私は手に持ったバングルを両手で包み込んだまま、レイモンド様に頭を下げた。

 

 
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