【完結】距離を置きましょう？ やったー喜んで！ 物理的にですけど、良いですよね？

１３３ 美に我慢は付き物らしい

　スタウト伯爵邸は、この国の建築様式とは大きく異なっている。

　この国の建築物は前世でいうところのロマネスク様式が大多数を占める。

　シンデレラ城のモデルとか眠れる森の美女のディズニーキャッスルのモデルになった事で有名なノイシュヴァンシュタイン城を思い浮かべれば大体想像がつくと思う。

　一方でリアーヌがコンフォート領で作った建築物は日本の現代建築、しかもスライムを素材として作ったガラスのような透明な強化板を木と合金と共に組み合わせ壁にした斬新かつ超近未来的なデザインのマンションである。

　パネル工法の様に大きな一定サイズの透明な壁を組み合わせ魔法で接合していくため、驚異的なスピードで建築できる。

　スタウト邸が半月程度で建てることが出来たのはその建て方を採用したことと、建物自体を小さ目にした事が要因だ。

　普通大貴族と呼ばれる上位貴族達の住む屋敷は軽く４階建て以上になることが多いがスタウト邸は３階建て。

　エントランスから玄関ホールを抜けると中庭を囲むように美術館の床のような大理石の廊下が回り廊下の様にグルリと囲んでいて壁はスライムで作った強化プラスチックになので透明で中庭が見渡せるロの字設計の邸である。

　

　実は某複合美術館の設計をリアーヌがパクッたのだが、長い時間魔石灯を使わず太陽光で邸の中を隈なく明るく出来る結果に繋がりけっこうエコロジーな建造物である。
　
　領地では真ん中に公園を据えて平マンションをロの字型に並べた団地を幾つも作ったが、この世界初の集合住宅マンションだったのでそれもかなり斬新で注目されたが、スタウト邸はその更に上を行く奇抜さである。


　王都の住人が見ればまず呆けるか、腰を抜かすだろう。

　但しコンフォート領民なら


『ああ、リアーヌ様のお屋敷ですか。成る程』


　と至極納得する事は間違い無い。


　広大な敷地に森が含まれるようなコンフォート邸の広大な土地と貴族派筆頭と言われるフラメア家の広大な土地が合体した敷地内なので外部の者の目に触れることはまず無いだろうと、周りからお許しを得た為リアーヌがやりたい放題で造ったのだ。


　元々建築業界で働いていたOLだった彼女の構想が、魔法ありきの世界で実った形である。
　

　今や各国でコンフォート領のマンションと似たような住居を作っているらしいのでそのうちどこの国でも普通になるのかもしれないが、リアーヌはそのマンションに必須なエレベーターや水回り関連の魔道具の特許を占有しているので世界中から彼女の口座に特許料が入ってくる。

　10代の貴族令嬢としては恐らく破格の大金持ちだろう。


　その富豪のご令嬢、いや、既に人妻なので夫人は現在浴室の続き間になっている小部屋で叫んでいた・・・



　×××



「ぎゃーツ、イタッ！　イタタタッ！」

「お嬢様、我慢で御座います。

　座りっぱなしでリンパが滞っているじゃないですか。はぁ。

　もう少し自分のお身体を労ってくださいませ」

「ギャッ！！　はいぃ！　てーーーーッ」


　まさかのリンパマッサージがこれほど痛いとは・・・　単純に座り過ぎである。


「滞っているから痛いので御座います」


　母の代から仕える美容メイド頭は容赦なくリアーヌの脹脛ふくらはぎを絞り上げた。


「こんなんじゃ冷えますッ！

　お子が産まれにくくなりますよッ」

「えぇッ！？。まだ早いわッ！　痛いッ」

「今日は初夜。

　いつそうなっても不思議ではありませんよ？　ほら、ひざ裏もです」

「はへ？　ッぎゃあッッ！」


　顔を赤くする暇もないリアーヌである。

　ヘロヘロになったところでオイルマッサージを施され、眠くなって船を漕いでいると


「仕上げの引き締めで御座います」


　とメイド達が冷たいタオルでオイルの拭き上げをしてくれた為、再び


「ひえぇッ！」


　と奇声を上げて目が覚めた。


　これでレイモンドが帰ってきても妻がソファーで寝こけていることは防がれた様である・・・

　後は晩餐のための着付けである。






　頑張れリアーヌ・・・