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125 再確認ですけど距離を置こうと言ったのは殿下ですよね?
しおりを挟む一方こちらマイケル・ジャクソン並みの足捌きで、玄関ドアから退出を余儀なくされたヨハンである。
地面に体育座りでゼーゼーと呼吸をしながら、
「無理です。多分5分が限界ですッ!
しかも殿下が暴れちゃ体力が持ちませんッ」
と、泣き言・・・
いや、完全に文句を言う。
「えー、そんなに凄いの?」
「ああ、己の体力の限界を感じた・・・」
がっくりと項垂れるヨハンの肩をポンポンと無言で叩くのは同じ騎士を目指すベイジル。
お前はよくやったとでも言いたいのかもしれない・・・
「ウ~ンドアの影から聞いてましたけど殿下の言う通りにしたってことは、あの護符の効果は2年で終わるってことですよね・・・
リアーヌ嬢にお会いするのを2年待ったら良いんじゃないですかね?」
アレンが首を傾げながら、腕組みをした。
「そんなに待てるかッ!」
と殿下は叫ぶが、
「いやでも、まぁ既に婚約は白紙撤回されたんですから。
焦ったって仕方ないでしょ?」
と現実を突きつけるのはカイル。
「ウッ・・・」
胸を抑えて苦しそうな顔をするのは勿論ハロルドである。
「そんな顔されても・・・
この国って独身のうちは結構貞操観念ユルユルですけど、他国はそうじゃ無いでしょ?
そもそも貿易の関係で諸外国との付き合いの多いコンフォート領で長い間育ったご令嬢ですから、殿下のやった事は許せない可能性は大いにありますよ?」
ウンウンと頷く側近候補達。
「多分印象最悪でしょう」
「まあイイとこ『目移りの多い人はちょっとね』くらいででょうねぇ」
「あ、俺の婚約者は『二股野郎なんてお断りです』って言ってたぞ?」
「俺の婚約者は『不貞男撲滅運動でもしようかしら』って言ってた」
「・・・・・・」
側近候補達4人の婚約者達は実のところハロルドとフロイラインの関係を知っていて黙ってくれている、実に懐の大きな淑女達である。
その彼女達の本音は
『お前ら分かってんだろうなアアン? 殿下と同じことしたらピー◯◯◯だぞ?』
だろう・・・。
現代日本と一緒で恋愛の自由が認められた国であろうと、そうでなかろうと女性が自分の確固たる地位を揺るがすような存在は許してくれるはずが無いのである。
鶴亀鶴亀・・・。
「そもそも距離を置きたいって言ったのは殿下です。
それが物理的にだとしても文句を言えない立場なのでは?」
アレンの最後の言葉で、トドメを刺された殿下である・・・。
・・・遅い。
×××
「ただいま。殿下が来てただろ?
どうしたの?」
リアーヌが私室に戻ろうと踵を返した途端に、その場で正面からフンワリと抱き締められた。
「レイ? お仕事はどうしたの?」
「今は午後の休憩時間だよ」
そう言いながら彼女の頬に軽くキスを落とすレイモンド。
「護符が赤く点滅してただろ?」
「え、そうなの?」
全然気がついていなかったリアーヌは思わず侍女のマーサを振り返ると、彼女はウンウンと頷いた。
「俺の指輪も水色じゃなくて黄色く光ってたから急いで帰ってきたんだけど大丈夫みたいだね」
にこりと微笑むレイモンドに頷くリアーヌと、
「当然でございます」
と、応えるマーサは右手を軽く掲げる。
「まぁ、屋敷なら君がいるから大丈夫か」
マーサの右手に装着された黒い革製のナックルダスターを目にして頷くレイモンド。
「当然にございます」
抱き込まれて真っ赤になる主人を横目に、マーサは優雅にお辞儀した。
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マーサさんお気づきの読者様もいらっしゃるでしょうが・・・
戦闘侍女様で御座います(・∀・)ノ
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