【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado

文字の大きさ
上 下
121 / 199

121 理久とレイモンド①※

しおりを挟む

※R⑮センシティブな事に触れる文章が含まれますので、ご注意ください。


 ----------------------------



 レイモンドの綺麗な青い瞳が射抜くようにシルビアに向けられているのに気が付いて、彼女は肩をビクリとさせる。


「アンタ、昔の俺理久のことが好きだったってことなのか?」

「え、そんなの・・・ 当たり前じゃないの」


 突然彼に質問され戸惑うシルビア。


「なんで当たり前なのさ? アンタ昔の俺理久に向かって『好き』だって一言も伝えて無いだろ?」


 眉間のシワが一層深くなるレイモンド。


「え?」

「アンタから『付き合って欲しい』とかも全然聞いた覚えがないぞ?」

「え、だって手紙・・・ 」

「手紙でもそう言った内容の文は書いて無かったよな?」



 ×××



 Mバーガーの全面ガラス張りのカウンター席でスマホをいじりながら、事務服姿の女性が隣に座る友人に声を掛けた。


「ねぇ、バーテン刺し殺しといて樹海で行方不明になったっつう女、名前なんだっけか忘れたけどさ~ あんたが辞めた会社の販売員じゃなかった?」


 同じ制服を着た彼女はコーヒーを飲むのを止めてちょっと笑った。


「販売員って・・・ まあそうだけど。いたねぇ、昔そんなのが。

 ちょっと顔が可愛いからって職場の男共がチヤホヤするから天狗になってた子でさ、自分からな~んのアプローチしなくても男は自分にすぐ惚れるからモテてるって思ってる勘違い女。

 直ぐ一発ヤラしてくれるから確かに一部ヤローには人気女子だったみたいね」

「うっわ、イタい・・・」

「でさ、口開いたら事務の私らにはキッツい物言いのクセにイケメンには秋波送ってたらしいから事務所では評判最悪でさ。

 フロアのサブチーフ任されてけど下の子達のレジ計上ちょろまかして自分の売り上げにしてたのバレてさぁ、現場の子達が怒って辞めちゃって人手不足になって現場大変だったんよね。

 それでも元々の売上いいし顧客も多かったから社長も見ないふりしてたけど、結局あの事件じゃん?

 さすがにドン引きよ」

「うえぇ、なんか話聞く限りヤバそうな感じ。まぁやった事考えればヤバい人か」

「パッと見はそんなふうには見えなかったけどね。

 可愛らしい系の顔してたし、背が低くて華奢でお嬢様っぽい儚げなタイプかな」

「人は見かけじゃないってことよね~」

「ホントそう。なーんかさ合コンで会ったバーテンダーが自分のプレイしてたゲームキャラとソックリだったって舞い上がってさぁ、ホストクラブに通うためにレジ誤魔化してたって。マジ笑えたわ」

「え、ホストクラブ? しかもゲームキャラ? 現実離れしすぎでしょ?」

「そ~。ホストにつぎ込むってのは聞いたことあるけど、ホストクラブのバーテンに金つぎ込む? って思ったし、しかもゲームキャラってナニさ? って。

 まあ確かに凄いイケメンだったからね。

 可哀想に変なのに付き纏われた挙句殺されちゃって」

「そのイケメン見たことあるの?」

「合コンにいたからね。金髪でさ、一見白人なのよね。

 本人曰く母親は生粋のフランス人で父親がクォーターだったかな? 父親が生粋の日本人じゃなかったから生まれた自分は白人みたいな見かけだって。

 で、それがどうしたの?」

「あぁ、死体見つかったらしいよ」


 そう言いながらスマホのページをめくる女性。


「へーよく見つかったね。指名手配される直前に車で逃げて行方不明だったよね。乗り捨てた車は見つかったけどさ」

「自衛隊が富士樹海での演習中に見つけたらしいよ。

 奥に入ってきゃ首吊った死体なんかごまんとあるから普通は放置らしいけど、指名手配犯で割と手前の入り口付近だったから死体を運んだらしいね」

「うわ、迷惑。自衛隊乙だね」

「ほんとにねぇ~ 公務員乙だわ~」



 ×××



 本当に自分に好意があった事が分からないのかと呆然とした顔をするシルビア。


「だって皆私が何も云わなくても直ぐに好きになって交際を申し込んで来たわ?」


 その言葉に眉を顰めて呆れるレイモンド。


「アホか。そんな事あるわけ無いだろ。

 言わなきゃ相手に気持ちなんか伝わるわけ無い。

 彼の理久のガールフレンド達は全員ちゃんと『付き合いたい』とか『寝たい』ってハッキリ言葉にして気持ちを伝えてきたからも彼女達に応えてたんだ」

「だったら!」


 急に期待を込めた顔になりレイモンドを見上げるシルビア。


「言ったろ、が彼女達と付き合ったのは彼女達が自分でハッキリ気持ちを口にしたから応えたって。

 御生憎様だが、

 アンタが期待してるレイモンドでもない」


しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。 『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』 ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。 まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。 みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。 でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

処理中です...