110 / 199
110 告白②
しおりを挟むレイモンドが自分の気持ちを恥ずかしそうにしながら打ち明けてくれたのなら、こっちも同じように気持ちを打ち明けなければフェアじゃないよね、と。
まるで恥ずかしい気持ちを抑え込むように、グッと両手を握り締める。
「あのね、レイ、その。
実は私もレイの事が異性として好きだったって気が付いたのって、丁度一か月くらい前だったのよ」
「え?」
「コレを作ってくれた日に、レイが好きって自覚したって言ったらビックリする?」
そう言いながらリアーヌは自分の首から下がるイフェイオンを模った護符を手にした。
「え、リア、俺の事好きだったの?」
自分の顔の直ぐ横からレイモンドの素っ頓狂な声がしたのに驚いて、思わず自分の顔の直ぐ横にある綺麗な顔を見ようと顔をそちらに向け、又赤面する。
「はう・・・ 心臓が・・・ じゃなくて、えーとレイは私に好かれてるって思ってたんじゃないの? 階段でレイとおんなじ気持ちだって答えたよね? 私・・・」
それとも自分の言った言葉が不十分だったのかと慌てるリアーヌ。
——好かれてなくてもレイは私と婚約しても良かったのかしら・・・
「うん。そうだけど、なんか全然自信なくてさ・・・
リアってオジ専とか枯れ専じゃなかったっけ?
俺、リアよりかなり年上だけどさすがにそれほどじゃないし、渋系っていうよりどっちかというと童顔で幼く見えるみたいだし・・・」
ちょっと自信なさげに長い睫毛を伏せて答えるレイモンドに、またもや胸が『きゅうんッ!』となるリアーヌ・・・
若い身空で心不全に陥り昇天しそうである。
――慣れないってコワいぃ・・・
ナニこれ、レイってこんなに可愛かったっけ?
と、脳内でただ只管悶えながらもふと気付く。
「そう言われたら、そうだった・・・ 気がする。
でも私ったらいつの間にかレイが好きになっちゃってたの。
人を好きになるのって、顔とか年齢とかっていう条件じゃないんだって今になって気がついたわ」
そう言いながら、リアーヌの赤い顔がますます赤みを増した。
「レイのどこが好きって訳じゃないの。レイだから好きになっちゃってたの・・・」
そう言って、思わず両手で顔を隠すリアーヌに今度はレイモンドの方が胸を押さえて悶えていたが、幸い誰にも見られることはなかったようである・・・
×××
その頃廊下では、報告の為にリアーヌの部屋までやって来ていたハンスが廊下で頭を抱えていた。
「うひゃあ~ お嬢の部屋の周りに消音魔法と認識阻害魔法を同時発動させながら物理結界まで張ってやがるッ! うがぁ~ッ! 一体あの人の魔力どうなってんのッ? ひょっとして底なし?! 3つも同時発動させるって、まさか魔王だったりする?」
その横で渋顔になるのは専属侍女のマーサである。
「バカ言うんじゃありませんハンス。レイモンド様はれっきとした人間です。多分」
「姐さんも多分って言ってるッス!」
「自信はないけど多分人よ人! だって角も羽根も触覚も尻尾もぜんっぜん無いものッ!」
「そんなモンあの魔力なら簡単に隠せるッス!!」
「・・・ そうね」
「・・・ マーサさん、そんなに簡単に『そうね』って引き下がらないで欲しいッスよ~ 怖いッスよ・・・」
ハンスは黒い頭巾で顔は見えないが、自分で自分の肩を抱いているので本気で怖がっているようにも見える。
お互いに同じ属性の魔力を持っている場合リアーヌのように鑑定能力がなくてもある程度相手の力量が自然に感じ取れるため、ハンスはレイモンドの魔力量が本当にとんでもないことがわかるのだろう。
ハンス自身も闇魔法の使い手としてはかなり能力は高いがのだが・・・。
「とにかく、待機よ、待機! こんな事されたら諦めるしかないもの」
はぁ~ とため息を吐きながら額を押さえる専属侍女。
「お嬢様とレイモンド様が出てくるのを待つしかないんだからね・・・ 全くもぅ。あの二人は昔っからこうなんだから・・・ レイモンド様が紳士的な方だからいいものの、旦那様にばれたら大目玉だわ」
「あのぅ、それより年頃の男女がドア開けっ放しとは言え実際は密室状態っていうの良くないんじゃないッスか?」
「いいのよ。奥様が許してるから」
「へ?」
呆れ顔のマーサの言葉に黒い頭巾の前垂れごと頭を傾けて、クエスチョンマークを飛ばすハンスであった・・・。
632
お気に入りに追加
3,001
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる