【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado

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109 告白①

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 リアーヌの質問に対してレイモンドがぼそぼそと答え始めた。


「リアが帝国に行くって言ったときに寂しくなってさ。おまけに残ってる王子妃教育は閨の作法だけってケロッとした顔で言っちゃってさ。思わずマジでハロルドを殺すって考えが頭をよぎってリアの事を異性として好きだったんだって初めて自覚したんだ」


 余りにも不穏なキーワードが飛び出し、慌てるリアーヌ。


「ええぇ!? ちょっと、不穏すぎじゃ・・・」

「そのずっと前から、リアが断罪劇に巻き込まれたらすぐ助けられるようにって魔法も剣も鍛えてたんだよ」


 そう言いながら、リアーヌを魔法で宙にふわっと浮かべるレイモンド。


「ちょ、ちょっと! レイ!」


 ふわりと浮いた彼女の体はソファーにスルリと座ったレイモンドの膝の上に着地した。


「元々自由になりたくて強くなろうとしてたはずが、いつの間にか隣の家の女の子を助けるために強くならなくちゃ! になっててさ。それに気が付いた時に本当におかしくて笑っちゃったよ」


 そう言いながら膝の上のリアーヌの頬に自分の頬をくっつけるレイモンド。


「俺が自分以外の人間の為に必死になってるなんて。最初は自分で信じられなかったけどね」


 きれいな金髪がサラリとリアーヌの頬をくすぐる。


「レイ・・・」


 何だか凄く照れてるみたいに感じられる告白をするレイモンドは今どんな顔をしているのだろう?

 面倒な事が大嫌いでいつも飄々としているように見えていた彼が、長い年月をかけてリアーヌの為に自分を鍛えていたと言うのだ――



 ×××



 レイモンドは元々前世の事はあまり口にしないし、リアーヌも詳しく聞こうと思った事は1度もない。

 前世と今生はきっと違う人生になるのだから、無理に過去を知る必要は無いと思っているからだ。

 分かっているのは彼が女性に関して昔からいい印象は持っていないように思える発言が時々ある割に女性の扱いにすごく慣れている事だ。

 彼の祖母や母親、伯母や妹にもレイモンドは受けが良い。

 多分、女性相手の仕事をしていたんだろうなとリアーヌは思っていたりする。

 侯爵家の嫡男で顔もよしスタイルも良し、仕事はエリート。

 なので貴族女性に普通に人気があるらしいが仕事上の付き合いはもちろんプライベートでも女性が自分に興味を持って近寄って来た時点で冷たくなるという噂はあまりにも有名だ。

 だからリアーヌと一緒にいるときはいつも楽しそうに過ごしていたのが不思議だった。

 きっと彼にとってリアーヌは妹扱いなのだろうと思っていたし、お互い転生者同士だから遠慮なく言いたい放題でも大丈夫だという気安さがあるからだろうと思っていた。


 王宮の図書館で出会ってもうすぐ8年。


 リアーヌとレイモンドの仲は『信頼』という目には見えないとてつもなく尊いモノがお互いの間に横たわっていた。

 それがいつの間にか恋心にゆっくりと育っていたのだろう。

 気が付くのはお互い随分と遅かったみたいだけれど、それでも一生気が付かずに終わってしまうよりずっと良かったとリアーヌは心からそう思った。



 
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