【完結】距離を置きましょう？ やったー喜んで！ 物理的にですけど、良いですよね？

８５ 推測②

　隣国にいたというフロイラインの叔父からコックス家の情報が漏れたのなら一体その漏らした張本人は今どこにいるのだろうか？

　――不穏な考えが３人の頭を過ぎる。


「ねえ、叔父さんが怪我をして入院したっていう知らせは隣国の病院からだって言ってたでしょ？　

　その後はどうなったのかな・・・　退院したのかな？」


　フロイラインが眉根を寄せて考える。


「ええそうね。あとね気になるのは入院中にアンソニーさんが魔術紋を入れられてしまったってことよね。

　いくら意識がないと言っても巡回する看護師位はいるんじゃないかしら？　

　なんで誰も気が付かなかったのかしらね」


　リアーヌも難しい顔をする。


「あの～・・・　病院から馬車を迎えに寄越すって普通なのでしょうか？　

　貴族だとそういう待遇もあるのかなって思ったんですけど何かおかしくないでしょうか隣国ですよ？

　いくら道案内を兼ねていると言っても・・・　そんな親切なことしてくれますかね・・・」


　ソワソワしながらミリーが不安気に呟く。


「そう言えばレイはフラウのご両親は溺死って言ってたのに、御三方が乗ってたコックス家の馬車って爆発したんでしょ？　

　おかしいわよね。ひょっとして怪しいのは病院？」

「密輸入と詐欺の元締めだったりするのかしら？　まさか・・・　でも。

　病院だからって絶対安全な場所とは限らないよね？」

「え。怖いですそんなの・・・」


　３人は額を突き合わせるようにドアの真ん前で、誰も聞いていないはずなのに小声で話し合う。


「この事は騎士団に可能性があるって事で相談したほうが良いかも知れないわね・・・」

「そうだね・・・」

「そうしましょう」


　その時急にドアがノックされ、３人は驚いて思わず飛び上がった――



　×××



　ドアの前で、騎士隊長が大声を出す。


「フロイライン嬢。王国騎士団の２番隊隊長アンダーソンです、大丈夫ですのでドアを開けてください！」

「あー、リア大丈夫だよ」


　レイモンドの声掛けでそっとミリーがドアを開くと立派な体躯の騎士服姿の男とレイモンドが並んでおり、それを見て３人はホッと胸を撫で下ろした。


「はー、驚いた。心臓が縮む思いだったわ」

「ほんとよッ！」


　ウンザリ顔のリアーヌと若干怒っているフロイライン、そして少し涙目でコクコクと頷くミリー。


「？　取り敢えず、事情聴取もあるからコックス嬢とメイドちゃんは一階の応接間に来てくれるかな？　団長が待ってるから。

　リアはそのまま待機ね」

「えー私だけ置いてきぼりなの？」


　若干ホラーじみた推理をしていたお仲間がいなくなるのを不満に思い、レイモンドに向かってついつい口を尖らしてしまうリアーヌ。


「すぐ戻るから待ってて。偽領主夫妻は捕まったから安心してていいよ」


　そう言うレイモンドが彼女の頬をツイッと撫でてニヤリと笑う。


「いい子で待ってなリア」

「ッ！　もうッ。分かりましたってば。待ってるわよ・・・」


　そのやり取りを見てフロイラインが思い切りニヤつきながら、ミリーを従えドアに向かう。


「リアちゃん、ちょっと行ってくるね～！」


　と、廊下でウィンクして手を振った。


　パタンと閉じるドアを横目に溜息を吐いてソファーに戻るリアーヌだったが、座ってホッとした途端にドアをノックする音がした。


「花梨の忘れ物かしら？　は～い？」


　ドアを開けると、その手首にいきなり


『ガシャンッ！』


　と手錠がかかる。


「ええッ？！　何コレッ！　むぐッん～～」


　思わず叫びそうになったリアーヌの口を塞いだのは、騎士団に捕まっているはずのローズマリー夫人だった・・・


「しぃ～～～～ッ！　黙りなご令嬢！　アンタの乗ってきたバケモノはどこだい？　

　それに乗って逃げるんだからねッ！！」