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55 公爵令嬢とヒロインちゃん③

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 顔色のよろしくないフロイライン。

 そしてそれを見ながら若干真顔になるリアーヌ。


「好きなら好きって態度や言葉で示してくれなきゃ誰だって分からないわよ。しかも真反対の態度ってどうよ?」

「デスヨネー。でもそれが出来ないツンデレ男子は多いもんよ? 王子が自分を好きだったって知った今はどう? ねぇ? なんか揺らいだりする?」


 机に手を置いて若干身を乗り出すフロイラインに、


「冗談じゃないわよ! 余計に腹が立つに決まってるわ。意地悪はただの意地悪だとしか思えないわね。私、周りに男の子が居なかったからそういうの全然気が付かないんだと思うのよ。ずーっとエスカレーター式の女子学園だったから。親戚として付き合いのある従姉妹は女の子だったし・・・ 今生は一人っ子だし」


 思い切り渋顔のリアーヌ嬢。


「そっかー」


 肩をすくめ仕方ないよねとソファーに座りなおすヒロインと


『はぁ~~~~~・・・』


 この世の終わりのような顔でため息を吐く悪役令嬢(仮)。

 ハロルド王子に好かれているという新事実にウンザリ気味のようだ。

 彼女にしてみれば、


『そんな態度で分かるはずが無いでしょ? 馬鹿なのかしら?』


 だろう。


「女子学園か~ そういや従姉妹もそうだったなー。お、ダウンロードが終わったみたいだよ。どれどれ? 何? レベル30、称号2守銭奴ってナニよ? しかも名前の横に前世の名前が平仮名で載ってるじゃん。ウケるー」

「私も平仮名なのよね~。変換できなかったのかしら箕手って」

「え? みのて? 私も箕手? え?」

「え? それ名前?」

「ううん名字。名前は花梨かりん

「えーーーーーーーーーーーーッ? 花梨ちゃん!」


 目の前で突然叫ばれ、ぎょっとしてソファから尻が10センチ程浮いたヒロイン。


「うおッびっくりした!」

「私、私、私よ、美里亜みりあ!」


 リアーヌが自分の鼻先を指差す。


「えええええ! みーちゃん!? なんでぇ」

「「なんで死んでんのよッ?!!」」


 お互い様である。




 ×××




 「でね、学園の入学式当日にハロルドとフロイラインが正門でぶつかって知り合ったのを屋上から双眼鏡で確認して、大喜びで3学年の担任のとこへダッシュで走って行って大急ぎで飛び級の試験を受けたわけ。
 で、卒業資格は貰ったんだけど3年生に既になってたから1年間休学して、今年卒業式に出たのよ。

 3学年から4学年の2年間で冤罪の罪をでっちあげられる事わかってるのに何でばっかみたいに真面目に通わなくちゃいけないのよって思ってね」


 リアーヌが顔の前に手を使って望遠鏡を覗く真似をするのを見ながら、ウンウンと頷くフロイライン。


「確かにね当然だわ。私もみーちゃんの立場だったらそうするよ。

 殿下は2年生だから卒業式に出なかったからリアーヌが卒業しちゃったのますます知りようが無かったって訳か。

 1、2年生が高等教育で3、4年生が短期大学って感じで区切られてるもんねこの国の学園って。入ってからびっくりしたわ。

 入学するのはめっちゃ楽なのに卒業試験が難しいのん知った時、鬼かっ! て思ったわ。卒業論文とか大学かよって思ったらマジでそうだったってオチでガックリよ」


 腕組みしたままウンウンと頷くフロイライン。


「そうなのよねぇ、私もびっくりしたわ。飛び級試験の勉強死ぬ気で頑張ったもの。受かった時はヒャッハーだったわー」


 『ヒャッハー』というセリフが実に似合わないリアーヌである。













~~~~~~~~~


称号1は勿論転生者(⁠「⁠`⁠・⁠ω⁠・⁠)⁠「

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