【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado

文字の大きさ
上 下
56 / 199

56 公爵令嬢とヒロインちゃん④

しおりを挟む

 

 ヒャッハーとか言いながら、扇で口元を隠すあたりでギリギリまだ淑女なリアーヌ――


「しっかし、1年の時は王宮に行くのが減って学園って天国だわって喜んでたのが、2年生になって殿下が入学した途端に学校が苦痛になるくらい嫌味言いに来る婚約者ってどういう事よ? 

 あの人『リアーヌは俺が好きだ』って言い切ってたから協力したのに・・・」


 文句を言いながらクッキーを3枚重ねで口に運びモゴモゴするヒロイン・・・


「どうしてそんな勘違いするのかが謎よ」


 渋顔になり嘆息中のリアーヌ。


「アイツの言葉を信じたのが間違いだったわ。寝る間も惜しんでアルバイトと事務所の経営と学生と、偽装恋人役までやってたのに。

 廊下でもトイレでも単語帳のお世話になって、学力キープしてたのよ? まあ卒業迄は頑張るけどさ。

 この国あそこ出てないと貴族って認められないんでしょ?」


 渋顔で更に4枚重ねたクッキーを口に運ぶフロイライン―― あ。落とした。

 ・・・3秒ルールを適応しようとしてリアーヌに手をはたかれた・・・


「うん。女性は結婚するんなら夫と一緒の身分証明が出来るから大丈夫なんだけど、独身で王宮女官とか侍女狙いなら卒業しないとね。
 なにしろ身分証が国から発行できないから」

「くそー。隣国に逃げるのには卒業必須か」

「え? 何で逃げるの? せっかく異世界で従姉妹同士で遊ぼうって思ったのに。

 ウ~ン、それなら花梨ちゃんウチの領に来たらいいよ。マンションの空き探したげるよ?」


 新しいクッキーを皿に乗せ直しながらフロイラインに寄せると、スッと彼女の手が伸びる・・・ どうやら4枚重ねは諦めたようだ。


「うーん、男爵家がヤバそうだから逃げたいのよ。
 ハロルドのリアーヌ懐柔作戦失敗により報酬が期待できない上に、偽装恋人のせいで評判ダダ下がりだから隣国へ行こうかな~と。でもマンションはいいなぁ~~」

「ヤダ。懐柔なんかされないわよ! あんなお子様ゴメンだわ。
 それよりも男爵家がヤバいって何がヤバいの?」

「フロイラインって強制猥褻行為を子供の頃から強要されてたっぽいのよね。そのあたりの記憶はメッチャうやむやになってるけど。
 私が前世の記憶取り戻したん入学式の前日だからさー」

「え、駄目じゃん! そんな親ギルティよ!!」


 プンスコ怒るリアーヌ。


「親っていうか、養父母みたいよ?」

「そんな設定ヒロインにあったっけ? でもどっちにしろ花梨ちゃんをそんな目に遭わすなんて。
 その夫婦飛竜をけしかけてやるわ!!」

「え・・・」


 ――あの祖父にしてこの孫である。


「そうだ! それより、花梨ちゃんが養子縁組で私の妹になったらいいわ!!」


 パンッと両手を嬉しそうに合わせてニッコリ笑う姿はまるで美の女神である。


「う~わ。尊ッ・・・ スマホほっすぃ・・・」


 つい違う意味で手を合わせて拝みそうになったフロイラインであった。


 そしてリアーヌ嬢、身内びいきが結構ひどいかもしれない・・・。



 ×××



 一方、何故か公爵邸からフロイラインに追い出されてしまったハロルド殿下は王城に向けて走る馬車の中で思案していた。


「帰ったら直ぐに父上達に確認をしなくては・・・。

 いや、それよりもフラウの事だ。犯罪者まがいの養父母の元から早く保護しなくては・・・

 ああ、でもリアーヌとの婚約を何とか・・・ あああぁあああああッ! 

 何でこんなに一度に色んなことが起こるんだぁあああ!」


 大変な時に大変なことが重なるものだと世間ではよく言うだろうと云いたいが。


 ――どちらにせよ女のことばっかりじゃね? 


 と石を投げつけたくなるのは気のせいだろうか・・・・?


しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...