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48 晴天の霹靂③
しおりを挟む「な、何するんだフラウ!」
急にハリセンチョップを受けて目を白黒させるハロルド殿下。だいぶ慣れたようだ。
「何もクソもあるかぁああーーーーーッ! アンタそもそもどう考えたってリアーヌ様に好かれてないじゃんッ!!」
「え? リアーヌが俺、あ、いや私の事を好きじゃない? え、なんでだ?」
「相手の態度でわかるでしょッ!! 分かるッ 判かれぇ! 解かる時ぃ! 判かれよぉーーーーー!」
何故かおかしな4段活用を口走るフロイライン。
かなり錯乱中の模様。
「ふむ。どうも行き違いがあるようだな? 殿下はリアーヌに自分が好かれていると思っていたのか?」
何をおかしな事を言ってんだコイツといった感じで渋顔になるビルエナ前侯爵
「え?」
「寝言は寝て言うものだ。そもそもお前がリアーヌを大事にせんから嫌われたに決まっとるだろうが」
「えぇ?!」
「マトモに交流する機会もないのに、会えば無視する、嫌味を言う、居なくなるではな。貴族の間では『殿下は婚約者がお嫌いなようだ』と有名だぞ? そもそもが我が孫娘と交流らしい交流をしておったのか?」
「え、茶会とか・・・」
「王宮での定例のヤツは交流というよりは義務だろう。まあ交流と言えなくは無いがなぁ。ソレ以外で何かリアーヌと過ごした事があったか?」
半目で耳の穴に指を突っ込み、指先の耳垢をふぅ~ッと吹くロイド――態度はメチャ悪。
『なんでソコで耳をほじるんだ!』
と、ツッコもうとして言われたことをふと考えてみる殿下。
「・・・ない? かも。いや、外交パーティーとかなら。あれ?」
「「「「え?」」」」
思わず王子を中心に左右に分かれていた側近候補がハロルドの顔をマジマジと見つめ、
「殿下、まさかコンフォート嬢をデートに誘ったことすら無いんじゃ・・・」
「1年生の時にコンフォート嬢と学園交流の機会がありませんでしたか?」
「コンフォート嬢を流行りのカフェに一緒に誘うとかしなかったんですか? え、まさかの王宮で会うだけ?!」
「コンフォート嬢は婚約者ですよね? 休みの日に会うとかは?」
一斉に側近候補達に質問されて固まるハロルド殿下。
彼等は全員もれなく婚約者がいる為、フロイラインとの仲を誤解される事の無いように休みの日にデートもするし、互いの家を訪れたり観劇に誘ったりと必死で努力していたりするのだが・・・
「ねえ、ちょっと待ってよ。殿下は私と一緒にデートまがいのこといっぱいしてきたけど、まさかリアーヌ様とは・・・」
「・・・。1度もしたことが無い」
「「「「「・・・ 馬鹿ですか?」」」」」
ふむふむと頷く元将軍。
「殿下は、そこな娘とはデートをしたことがあるということだな? 成る程のう。まあ婚約は破棄じゃな。いいとこ白紙撤回か」
実に嬉しそうに破顔するロイド。
「え?」
「ソレが王家とコンフォート家、そして儂と国王の契約だからな。サッサと王宮に帰って両陛下に確認すればいい。最初から孫娘が嫌だというものを無理矢理婚約者にしたツケだ」
「え、嫌って・・・」
「コンフォート側は何度も王家からの婚約の打診は断った筈じゃ。知らんかったとはいわせんぞ? 儂も、反対だったからな。我らは誰一人としてあの子と殿下の婚約の継続なんぞ望んどらんよ。良かったな安心しろ」
青天の霹靂という言葉を今日知った殿下である――
×××
一方こちらレイモンドの手によって、ベッドに寝かされて、口には体温計まで突っ込まれ困り顔のリアーヌである。
「ねえ、レイ大丈夫だから」
「だーめ。まだ顔が赤いじゃないか。ちゃんと寝てて」
「・・・」
顔が赤いのは、レイモンドの顔が近くにあるからだとは言えないリアーヌはぐぬぬと押し黙る。
さっきまで額に手どころか彼の額を押し当てられていたのだから、自分の恋心に気が付いたばかりの彼女にとってはご褒美どころの騒ぎじゃなくて分不相応な献上品の域である。
『心臓が爆発するかと思ったわよッ。こっちの気も知らないで子供扱いするんだから』
つい頬を膨らませてしまう。
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クスリと微笑むレイモンドに胸が跳ねる。
「レイってほんとに美形よねぇ」
――美形の笑顔は心臓に悪いってホントかも
「はぁ? 普通でしょ? どうしたの、やっぱり熱があるんだね・・・ 可哀想にヨシヨシ」
ポンポンと布団を叩くレイモンドを見ながら自覚がないのね、と思わず溜息したリアーヌだった。
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