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34 友達じゃないか!〜王子視点有り〜
しおりを挟む視線を小さな手書きカードから全く動かさずに淡々と答えながら歩くフロイライン嬢。
「私と男爵夫妻って血の繋がりがないんですよ」
「え、養女なのか?」
「ウ~ンどうなんでしょうかね?」
「それすら知らないのか?」
ギョッとした顔になり立ち止まる殿下+側近候補達4人。
「ええ。他人だってことはメイドの証言で分かってるんです。貴族の娘らしいってのは執事を絞めあげぇ・・・ いえ、使用人が言ってたんですけど、その辺りの確認ができないんですよ。ほらなんてったって未成年なんで。で、私って学園に入学する前はエロジジイや変態ババアの所に連れて行かれてはベタベタベタベタ身体を触られる生活させられてたんですよ。もちろん服越しですけどね」
「「「「「え?!」」」」」
「で、今の所両親は学園で金持ちの男捕まえて来いって感じなんですけどねー。冗談じゃないですよ」
「「「「「!?」」」」」
「学園の卒業証書が手に入ったら貴族としての身分証明書が国から発行してもらえるから、卒業後は隣国にトンズr、いえ、逃げて就活する予定だったんで貯金をしてたんですよ。まあ殿下が王宮で雇ってくれるって云うから隣国行きは考え中ですけどっ・・・ て、え? あら? 皆どうしたの?」
単語カードから彼女が視線を上げると驚愕の表情で5人の男性陣は自分の遥か後方で立ち止まっていた。
「フラウッ! 何で早く俺に相談しないんだッ!?」
王子の大声に思わず耳を塞いだフロイラインである。
×××
優しげなピンクブロンドに天使の輪が浮かぶ艷やかな髪。
愛らしく大きな瞳をした可憐で小柄なフロイライン・コックス。
その見た目は非常に儚げで『天使のようだ』と学園では囁かれているが、本来はやたらと逞しい女の子だということを俺達は知ってる。
俺と側近候補達は1年間通じて本当の彼女と付きあって来て、よくよく理解してたつもりだったんだ。
外見と中身のギャップは凄いが、話題は豊富で彼女にはいくつ引き出しがあるんだろうといつもワクワクさせられるし、細かいことにもよく気が付き建設的で的確な意見を述べる姿は頼もしかった。
何よりも口が硬いのは異性という垣根を越え友情すら感じてた。
周りを見回しても滅多に居ないような美しい見目なのにそれを鼻にかけることは無く、市井の喫茶店で飄々と給仕をこなし大勢の平民達の縁結びをする事業を自身で興し軌道に乗せたその手腕は、俺の周りにいる側近候補が色褪せてしまうくらいには優秀だと思っていた。
――その彼女がいずれは隣国に去ると言うのだ。
しかもその理由が義父母から逃げる為だと?!
会話の中に度々『家から逃げる』という言葉がでてくるので以前から気にはなっていたが、直接理由を尋ねた事は無かったんだ。
そしてその理由が義父母からの猥褻行為の強要で、しかも幼い頃からと他人事のように語る彼女に俺は愕然とした。
「友人の置かれている状況に全く気がついて無かったなんて・・・俺って奴は・・・」
俺のリアーヌに対する拘りのせいで彼女を巻き込み、学園では噂の的になっているというのに
『気にしないでいいよ。それより成功報酬と卒業後の仕事の事宜しくッ!!』
と、朗らかに言う彼女がいたから・・・
「なんてことだ・・・」
本来なら自分の周りの側近達の働きに対して労りや感謝を忘れてはいけない立場の自分が、完全に彼女に対して甘えてた。
情けない・・・
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