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33 ヒロイン暴露する?
しおりを挟む『リンゴーン リンゴーン・・・』
学園の下校のベルが鳴った。
時間は丁度午後2時半である。
未だに意気消沈気味のハロルド殿下は、ピンクブロンドの御令嬢と側近候補達に囲まれながら放課後の廊下を学園の馬車溜まりに向かい進んでいた。
「いいですか殿下」
歩きながら話しかけるのは当然フロイライン嬢。
「スタート地点から既に失敗していたんですから真摯に今までの態度を謝るしか方法がありませんからねッ! そこんところを間違っちゃだめですよ」
「失敗って・・・ う、ああ。分かった」
「入学後私の指導でせっかく王子として上品な振る舞いを身に着けたんですから、もちょっと上手く活用してください。彼女に会ったら先ずは?」
「急に訪問してすまないと彼女に謝罪する」
「それから?」
「何故1年間休学したのかを聞く・・・」
「ブッブー! 駄目ですやり直し」
急に不機嫌な顔になるフロイライン。
「男女間で過去に起こったことを根掘り葉掘り聞いて好感度が上がるわけ無いでしょうがッ! 女々しいわッ!」
「えぇ・・・ そんな・・・」
そのやり取りを周りの側近候補がちょくちょくメモをしているのを目に入れて更にムッとするフロイライン。
「殿下、質問は駄目ですよ。今日コンフォート家に行くのは、兎に角リアーヌ様に謝り倒しに行くのが目的なんですから。今迄の不実な態度はリアーヌ様の気を引きたかったのが理由であって、決して嫌いなわけじゃない、自分が好きなのは婚約者である貴女だけだって本気で伝えるのが目的ですッ! くれぐれも殿下の知りたい事を聞きに行く訳じゃないって肝に銘じて下さいねッ?」
「いや、不実って・・・」
「私と1年間学園でベタベタしてたでしょーがッ! 後は手を繋いで繁華街に行ったりしてデートの真似事をして、それとなく噂を拡散したり・・・」
そう言いながら側近候補達の顔を睨む。
「そんなアホな事してないで、リアーヌ様の身辺に起こってる情報をちゃんと集めてりゃこんな事にならなかったのよ? アンタ達分かってるの?!」
話題を振られついつい首を引っ込める子息達・・・ 顔色は実に悪い。
「ンッとに、もおぉ! 信じた私が馬鹿だったわ・・・ 所詮15歳男子じゃ駄目なんかなぁ。みんな御勉強は出来るみたいなのにねぇ・・・ やっぱ経験値かぁ」
思わず小声でブツブツ呟くが、この5人と違い彼女は前世でのキャリアがある。
この世界の住人は見た目は西洋人なので、一見すると大人のように見えるため錯覚してしまいがちだが中身は子供なのだと再認識したフロイライン嬢。
思わず、はあぁ~と深い溜息をつくと額を押さえる。
『コイツらコレで将来的に国のトップに据えられる訳でしょ? この国ホントに大丈夫?・・・ イヤイヤイヤイヤ私の知ったこっちゃない。気にしたら負けよ!!』
因みにだが、フロイラインは成績が落ちると家庭教師を付けられ副業に支障が出る恐れがある為、常に成績は落とさないようにお手製の単語カードを使っていつでも何処でも暇さえあれば勉強していたりするのだ。
涙ぐましい努力の甲斐あって彼女の成績は常に学年トップである。
今も片手に白い画用紙を小さく切った紙片に書き込んだ文字を時々追っている。
「なぁ、フラウは寝る暇も惜しんで勉強も副業も頑張ってるけど、そんなに早く自立しなければいけないほど男爵家は財政難なのか?」
「あれ? 私ったら理由言ってなかったですか?」
ハロルド殿下の問いかけに視線も動かさずに返事をするが、手元の単語カードの内容を確認しつつ頭の隅っこでこの国の行く末を心配しながら真っ直ぐ歩ける彼女は実に◯畜のお手本。
「あぁ」
「私と男爵夫妻って血の繋がりがないみたいなんですよ」
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