【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado

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32 公爵令嬢と祖父母様①

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 リアーヌの母方の祖父母、ビルエナ前侯爵夫妻は王国では知らない者はいないと言われるほどの超有名人。

 祖父はその昔猛将と恐れられた元将軍で、たった一人で一個小隊くらいなら壊滅させ、ワイバーン程度なら捕まえて馬力で飼い慣らすというとんでもない野生児・・・ゲフン、戦闘能力を有している。

 祖母は王家のマナー講師として有名で、それこそ国外の王侯貴族からも講師として招きたいという声の上がる人物で普段からマナーに関しては厳しい人だ。


 夫妻は前国王陛下の退位とともに現役を引退し、爵位を息子夫婦に譲り領地の端にある別邸に移り住んだ。

 因みにビルエナ領はコンフォート領とは隣り合わせで、祖父母同士は昔から仲が良い。


 鋼鉄の女と熊男

 野獣とマナーの鬼

 剛腕の男と鉄壁の淑女


 様々な渾名が流れているが必ずその異名のに付くのが


『王族すら敵わない』


 である。

 実際前国王陛下夫妻も現国王も彼ら二人が超苦手らしい・・・



 ×××



 リアーヌは幼少期から祖母マナーの鬼に厳しく躾けられたので、淑女のお手本のような振る舞いを重要な場面で披露できるように育った。

 例え転生者チートや現代日本の知識があったとしても、この世界の貴族としてのマナーは誤魔化しがきくようなモノではなく、本物の貴族女性の嗜みたしなみを身に付ける為には繰り返して身体で覚えなければいけないもの。

 領都の本邸カントリーハウスに度々訪れた祖母と、その弟子であるマナー講師達によってリアーヌは完璧に鍛え上げられたと言っても過言では無い。


 ――当然1人の時は全て忘れてゴロゴロするが・・・。


 一方祖父はリアーヌを目に入れても痛くないとばかりに猫可愛がりをする為、マナーレッスン中は近寄ることを――祖母に――許されずに始終指を咥えて見ていたが、終わった途端に飛びついて領都の甘味処や買い物、乗馬での遠出や森へのピクニックへと連れ回した。

 彼はリアーヌと王子の婚約を祖母や母以上に猛反対した人でもある――王家に自分の愛孫を取り上げられるのが嫌だったというのが主な理由だが。


 その祖父母が母の要請を受けて王都に向けて領地を出発。


「なんか荒れそう・・・」


 侍女のマーサはリアーヌの呟きを拾わないように耳を塞いで、素知らぬ顔で午後のお茶の用意を始める事に決めたらしい。



 ×××



 一方こちらは宰相の執務室で書類を纏めているレイモンドである。

 昨日は朝っぱらから公爵邸に呼び出しを受けて、護符を作り公爵夫妻のお使いをこなした後で騎士団に呼び出されて1日が終わってしまい、書類仕事が少々遅れてしまった。

 天才肌の彼でも机の上にうず高く積まれた書類に目を通すのには時間がかかる為、今日は朝からずっと机に張り付いて仕事をこなしていた。


「? うん?」


 ちょうど昼休みに入ろうかという頃になって一枚の書類に引っかかったレイモンド。

 その書類の束は国内で怪しい動きをする貴族家の報告書で、家格と税収に釣り合わない収支が報告されたものの一部で主に脱税の疑いがある貴族家のリスト。

 その中に書かれた家名の1つに見覚えがあった。


『コックス男爵家』


「・・・コレって例のヒロインの家じゃないか?」


 書類をマジマジと見直して、もう一度その手前のページを捲り考え込むレイモンド。


「なぁ、コレってヤバいんじゃないか」


 隣に座る同僚2人に声を掛けて、一緒に書類を確認する。


「・・・台帳の確認だな。再確認急げ」

「確認次第騎士団に連絡するか?」

「宰相閣下に報告を」


 ガタガタと急に慌ただしくなる執務室。


『マズイなコレ。表沙汰になったらリアの婚約が継続になっちまうかも』


 レイモンドが難しい顔になった。


『抜け道がないか探ってみるか』


 彼は席を立った。













~~~~~~~~~~



お腹真っ黒でも、お仕事はちゃんとしてるのよ~(⁠~⁠~⁠▿⁠~⁠)⁠~

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