【完結】距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

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24 ハロルド王子②〜過去

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 『魔法や勉学の面でも優秀です。禁忌書庫の本を読めるだけの魔力と知識がありますからね。最初図書館で見かけた時は驚きました』

『末恐ろしいですね・・・』

『天才とはそういうものです』



 ×××



 先日聞くともなく耳に入れた侍従長達の言葉を思い出しながら、両親の前に座った俺は二人の問いかけに戸惑っていた。


「ハロルド? そろそろ婚約者候補を絞ろうと思うのよ?」

「そうだな。既に6回茶会を開いたんだ。将来的には王子妃、王妃となる相手だからな。相手は慎重に選ばないといけないが、お前自身の希望はできるだけ取り入れようと思うのだが。
 どうだ興味の湧いた令嬢は何人くらいだ?・・・ ん? どうしたんだ? 顔が赤いぞ?」

「私は、」

「誰か意中の者でもいるのか?」

「・・・リアーヌ・コンフォート嬢が気に入りました」

「「・・・」」


 恥ずかしいのを我慢して彼女の名前を言ったのに、両親の様子は芳しいものではなかった。


「よりによって・・・ いやお前は見る目があるのだろうな」


 そう言って父は溜息を吐き、


「マチルダ様の娘のリアーヌ嬢なら納得だわ。優秀だし誰よりも美しいわ」


 母はうっとりとした顔をした。


「しかし困ったな。事前に従姪はとこが参加すると伝えた時に説明したろう? 彼女だけは婚約者候補とは別枠扱いでの招待だと。公爵家側もリアーヌ嬢に王宮での茶会の経験を体験させるのが目的だと。まあそれ以外にも事情はあったが・・・」


 父の説明では、その年頃の少女がどの程度の教育がなされているのかを家庭教師の説明や貴族家の当主やその夫人から話を聞くことがあっても、多少の贔屓目や謙遜があって脚色されているのだそうだ。

 俺自身も含め王都に住む従兄弟達も全員男ばかりで年の近い女性の親族がいるのはコンフォート公爵家だけ。

 なので茶会にリアーヌ嬢を招いて彼女の教養や作法の進み具合を選定基準にした上で他の令嬢達の人数を絞るのが目的だったという事を事前に説明したというのだ。


 ・・・実は婚約者選びに興味がなさ過ぎて両親の話した内容などマトモに聞いていなかったし、婚約者だ婚姻だなどと言われてもピンとこなかった俺は当然父の説明など覚えていなかった。
 

「リアーヌ嬢は優秀すぎて他の子供との比較対象にはならないと公爵夫妻に言われていたのだけれど、それも親の贔屓目だと私達は思っていたの。大間違いだったけれどね。
 彼女は長い間領地に居たので私達も面識がなかったからこれを機会に交流を図ろうと言う考えもあって、丁度王都にやって来るのなら学園に入る前に友人を作ってみてはどうかとお誘いしたのよ」


 友人作り云々も、自分の考えた建前だったと言う母も頬に手を当て困ったような顔をする。


「彼女は元々王族籍をもっているからな。王家との縁は必要ないと判断されたので元々婚約者候補には議会から選ばれなかった。
 だが諸々の事情で国王の権限で招待したのだ。
 それと彼女は一人娘でコンフォート公爵家の跡継ぎ問題もあるからなぁ・・・お前との婚姻は難しいだろう。
 公爵夫妻も優秀な跡継ぎであるリアーヌ嬢を手放さないだろうしな」


 困ったように眉を下げる両親。


 そんな馬鹿な、と思った。


 候補に選ばれていないのなら態々茶会に招いて俺と会わせなくてもいいじゃないか!


「婚約するなら彼女がいいです。彼女以外は要らないッ!」


 そう言って部屋を飛び出して、自室に閉じ籠り約2週間。

 要求が受け入れられるまでハンストを続けた。



 ×××



 半年後。


 俺の要求に折れた両親が議会に何度も掛け合ったらしく、何とか賛同を得て無事に彼女との婚約に漕ぎ着けた。

 父はあまり乗り気ではなかったらしいが母が相当乗り気だったと聞く。


「マチルダ様は私達世代の令嬢なら誰でも憧れていた先輩なのよ。その娘が私の義娘になるなんて素晴らしいの!」


 そう言った母は俺以上に興奮していたような気がする。


「あれだけ望んだ婚約者だ。大切にするんだぞ?」


 父は疲れた顔でそう言ったが、彼女が俺の婚約者になったことが嬉しくてその理由を聞くことはなかった。



 ×××



 そして一番最初の婚約者としての挨拶の日。

 応接室で互いの両親と共に挨拶を交わし、2人で連れ立って庭に用意された茶席に移動するのに彼女をエスコートしようとドキドキしながら手を取った。

 彼女の綺麗な横顔を急に見たくなって、ふと隣に顔を向けるとやっぱり彼女の顔は俺より高い位置にあって・・・


「デカい女だな・・・」






 俺の呪いが発動してしまった。











~~~~~~~~~~



ハンスト≒ハンガーストライキ⊙⁠.⁠☉

飲まず食わずで抗議し要求を通そうとする行為。

良い子は真似をしてはいけません。

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