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27 フロイライン嬢とハロルド殿下①

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 『コンフォート公爵令嬢でしたら、今年卒業しましたが? しましたが? シマシタガ? シマシタガ?・・・・・・』


 職員室から生徒会室へ足取りも重く帰って来たハロルド王子は職員から聞いた言葉が頭の中で反響しているような気がした。ああぁ・・・リフレイン・・・


「そんなバカな。いつの間に?」


 一昨日の茶会の席では彼女は何も言ってはいなかった。

 もっともそれ以前に飛び級制度を使って早期卒業の為の試験を受けて合格し、昨年度から1年間休学していたことすら教えて貰えていなかったことに気が付いて頭を抱えた。


「ちょっと! 殿下ッ! リアーヌ様卒業しちゃったってどういう事? 私そんなの聞いてないわよッ」


 腰に手を当てて頬を仔リスのように膨らませるのは男爵令嬢のフロイラインである。


 現在2年生。


「殿下が彼女にヤキモチ焼かせたいからって駄々をこねるから協力したのにッ! 去年1年間リアーヌ様のクラスに行かないようにして遠くから見せつけて距離を置くって宣言したら、彼女が焦って親密度が上がる筈って言って聞かなかったのアンタでしょうがっ!! 元々彼女が学校に居なかったらそんなの意味ないじゃんッ!」


 生徒会室の会長の机に頭を置いてどよ~んと落ち込むハロルドに向かって遠慮会釈なく怒鳴るピンクブロンドの美少女。

 呼び方が『殿下』から『アンタ』呼ばわりになっているが、全員ツッコめない。

 そのくらい彼女が本気で怒っているのが分かるから。



「アンタ、好きな人婚約者の事を知らなすぎでしょッ!」


 彼女の言葉が胸にズブリッと突き刺さり、更にズモモモモ゙ッと落ち込んでいくハロルド王子。


「私は卒業後は城内で雇ってくれるって言うから協力したのに・・・」

「スマン」

「どうして好きな人にそう素直じゃないのよ~~ 私には好きな人はいないからわかんないけどさぁ」

「・・・ハァ」

「溜息ついてんじゃないわよッ! あなた達もねえッ!!」


 そう声を掛けられてビクッとするのは殿下の側近候補たちである。


情報収集リサーチくらいしなさいよッ! いくら学年が違ってても1年も前から彼女が学園に来てない事くらい、その気になれば調べられた筈でしょッ! ほんっとにお坊ちゃんばっかりなんだからッ! そんなんで側近になれると思ってんのッ!? あ~あぁあ゙ぁッ・・・ くっそ忙しかったとはいえ、やっぱアタシが情報収集すればよかったのよッ! ハッ! どうすんのよ殿下ッ! リアーヌ様に絶対に勘違いされちゃってるわよッ」


 机からノロノロと顔を上げる殿下の目に映るフロイラインは、その美貌が勢い良く裸足で逃げ出したようで、まるで鬼の形相に見える。


「勘違い・・・?」

「アンタ絶対に浮気してるって思われてるわよッ!! あぁ~あ゙ぁ! 王宮女官の夢がぁああああああ~~ッ トンズラ計画がぁッ」


 美しいピンクの髪の毛を掻きむしりながら叫ぶフロイラインの声が生徒会室に響いた。



 ×××



 「とにかくッ!」


 ビクッとする男性陣。


「リアーヌ様に謝りなさいッ!!! アタシも謝るからッ!」



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