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28 フロイライン嬢とハロルド殿下②
しおりを挟む「リアーヌ様に謝りなさいッ!!! アタシも一緒に謝るからッ!」
鬼の形相になっているフロイラインを横目に、リアーヌに会うことを考えるだけで途端にもじもじし始めるハロルドと、力なくうなだれる側近達。
「な・に・を・モジモジしてんのよッ! イケメンだからって何でもかんでも許されるわけじゃないんだからねっ゙!!」
「いや、だって・・・」
「だってもそってもあるかぁッ!」
彼女は王子より1歳年下だが、実に中身はオカンである。
×××
入学後すぐに城近くの繁華街に並ぶ庶民向けの喫茶店で髪色を魔法薬で変えてアルバイトを始めたフロイラインは、そこで自分にちょっかいを掛けてくる平民男性達の恋愛相談をよく受けていた。
彼等からすれば、見た目は極上だが下町の女性より遥かに口が達者で、頭もキレるがフロイラインは棘も毒もある高嶺の花だ。
男性達は始めこそ彼女にコナをかけるが、そのうち
『違う、そうじゃない』
と気がついて理想の可愛い彼女をゲットして幸せになる、というのが定番の流れ。
その際お節介ババア宜しく仲介や助言をして小遣いをゲットする。
要は男女の仲をコンサルをするのがフロイラインの副業だ。
ソレがとうとう平民の間で有名となり喫茶店の店主に
『本格的にやってみたらどう?』
と言われて喫茶の2階の小さな事務所をタダ同然で借りて本格的に〈恋愛コンサルタント・ローラ〉を開業した。
因みに喫茶店のウェイトレスも副業なので学業と合わせて3足のわらじを履いているので結構忙しい。
本業である学生生活もそこそこに着々と毒親からの逃走資金を貯める彼女だったが、ある日ハロルド王子が態々恋愛相談にやって来た。
恋愛コンサルタント、という聞き慣れない仕事を請け負うという女性に会いたいと言って。
彼の相談は婚約者との付き合い方という漠然としたモノだったが、彼女は王子が婚約者に対して素直になれないという悩みを持っていることにすぐ気が付いた。
ハロルド側も目当ての女性コンサルタントが、学園に今年入学した『天使』と噂される男爵家のご令嬢だった事に気がついてビックリ仰天だったが・・・
王子の話をよくよく聞いて重箱の隅をつつく様に問い質せば、彼は出会った日に己の婚約者に一目惚れして以来どう対処したらいいのかわからずついつい塩対応し続けてもう8年、もうすぐ9年だと泣き言をつらつらと語り出す。
聞いていてコイツどんだけ初恋拗らせてるんだよと思わず顎が外れそうになったフロイライン。
学園卒業後には男爵家を尻に帆をかける勢いでトンズラしたい彼女は、報酬は貰える上に御礼に王宮女官か王宮侍女の仕事を斡旋してくれるというハロルド王子の条件に頷いて、彼の恋を成就させるお手伝いをする事にした。
ただし自分をダシに婚約者の気を引こうとする計画を側近達と一緒に計画するのを聞いて唖然としたが。
え、それ私、下手したら不敬じゃない? 公爵家に目をつけられたら男爵家なんかぺちゃんこじゃん――それは全然いいけど。モットヤレ
「大丈夫、リアーヌは俺の事を好きなはず!」
という王子の余裕たっぷりの台詞には首を傾げたが。
ところがだ。
昨日定例のお茶会のリアーヌ嬢の反応が何やら気になる、嫌な予感がするとウジウジし始めたハロルドの首根っこを捕まえて連れて行った先、4年生の教室にお目当ての公爵令嬢がいないという。
慌てて職員室に問い合わせに行くと、とっくに卒業しているという事実が明らかになったのである。
どうすんのこれ? こんな展開になるなんて、全然知らないよ。
彼女に土下座する?
そうだスライディング土下座にしよ。
うん、殿下と側近もそれにしよう。
・・・
気が遠くなりそうな思いで彼女は天井に視線を向けた後、大きくため息を付いた。
「日本人じゃないから通じないかぁ」
――とにかく悪役令嬢に会わないと。
~~~~~~~~~~
ローラ・ソリュム(恋愛コンサル)≒フロイライン・コックス(ヒロイン)(^∇^)ノ♪
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