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30 男爵令嬢フロイライン・コックス②
しおりを挟む気持の悪い大人達にベタベタ触られる様な場所に子供を連れて行く親っておかしいよね? しかもどうぞどうぞってソイツらに差し出されてた気がするゾ・・・
そういや領地もネコの額程度しかない男爵家のクセに調度品は成金趣味でギラギラだったし食事も朝からステーキだったし、母親の方は似合わないけど明らかにお高そうな宝石ジャラジャラ着けてた気がする・・・
ひょっとしてあの人達、フロイラインを金儲けに使ってたんじゃ? ・・・だとしたら児童虐待案件じゃん。
うわ、ヤバぁ。
王立学園で金持ちの男捕まえてこいって事なの?
・・・だっから、あんなにイケメンホイホイだったのかあのヒロイン。
って今は私がそのヒロインのフロイラインなのよね?
マズイ。不味すぎだわ。
このまま穏便に学園生活なんか送れる気がしないわ。
・・・よし。トンズラしよう。
×××
彼女の想いを他所に馬車は確実に学園に向けて進んでいく。
一緒に乗って来たお付きのメイドが気遣わしげに私の顔を覗き込んでいるのが目の端に映った。
歳の頃はヒロインよりほんの少し年上だと聞いている。
昨日倒れた時に一緒にいたのもこの子だった。
茶髪にソバカス、焦げ茶の瞳。
ヒロインであるフロイラインのように目にイタイ色合いじゃなくて、落ち着いていて目に優しい日本人好みの優しげな色だ。
「どうしたの? ミリー」
「いえ、お嬢様のお体が大丈夫かと。昨日制服の試着中に・・・」
「ああ、頭打って気絶?」
「はい。旦那様も奥様もいくら入学式だからといって昨日倒れたお嬢様を無理矢理学園に送り出すなんて・・・」
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「え?」
「え? どうしたの?」
「いえ、お嬢様は今迄旦那様達に酷い事をされても微笑んで大丈夫としか言いませんでした」
「え、そうだっけ?」
「はい・・・やっぱり実の親じゃ・・・いえ、何でもありません」
ウ~ン。この子、あの両親を毒親って知ってるっぽいな・・・
「私もね、子爵様の所には本当は行きたくないのよ? ベタベタ触られるから。でもまあ行けって言われたら仕方ないでしょ?」
「ああ、やっぱり。我慢していらっしゃったんですね」
彼女はそう言いながら、自分のポケットからハンカチを出してそっと目元を拭いた。
・・・記憶が曖昧で自信は今ひとつ無いんだけど、やっぱり児童虐待案件みたいな気がするなぁ。
「ミリーは両親がどうして私にあんなこと強要するのか知ってるの?」
「え。えぇと・・・」
「言って。なんで?」
さんざん迷う様子を見せた後で彼女は意を決したように顔を上げて
「お嬢様が、旦那様達の本当の子供じゃないからだと思います」
「へ?」
このゲーム、ヒロインは普通の男爵令嬢だったよね?
「私、聞いたんです。お嬢様と旦那様達は本当は血の繋がりがないって言ってたんです・・・ 夜中の戸締まりの見回り中に応接間の前の廊下を歩いてたらドアが開いてて、御二人がお酒を飲んで結構大声で話してたんです」
「え? マジ?」
「え? まじ?」
「ああ。ゴメン。それって本当に?」
彼女は必死でコクコクと頷いた。
その目は本当に信じて欲しいという目だと思えた。
え?じゃあ、あの人達って他人?
ヒロインって養女なの? うわぁ、いきなり人生ハードモードじゃないの・・・やばあ。
何とか逃走資金を工面しなくっちゃ。ウウ~ンなんかいい方法考えないと・・・
バイト探すかー・・・?
×××
始業日にはゲーム開始である王子との出会いを校門前で果たしはしたものの、それ以降は王子の存在など超ブッチして城下に広がる繁華街に単独で潜入し、とある喫茶店の『ウェイトレス募集』の張り紙を見つけてその翌日には面接に漕ぎ着けた彼女は某ファミレスでのバイト経験をガッツリ生かしたプレゼンで給仕としての自分の有能さをアピールし、即決で雇われる事となる。
その後逃走資金を得るために本格的に奔走する事となったフロイライン――
・・・そう、彼女も日本からの転生者であった。
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