君と恋をしたいのに、なかなか始まらなかった君との恋の物語 〜攻略対象の王子様と悪役令嬢(仮)〜

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9章 オリヴィエ・アボット〜過去〜

83. オリヴィエ・アボット⑧〜亭主元気で

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 翌朝、ルームメイトの子爵令嬢に朝早くから起こされた。


「ねえ、今日は休んだほうがいいわよ」


 彼女は困った顔をしていた。


「?」

「上級生が貴女の事探してるって。学園に登校するのを待ち構えてるらしいわよ」

「え? なんで?」

「なんでも辺境伯家の嫡男に気に入られた1年の女子を探してるって噂よ? ソレって貴女の事でしょ?」

「え? ・・・気に入られた? 図書室の本を人質に取られて話しただけなのに?」


 ――確かに今まで避けられたり噂されたりはあったけど・・・


 入寮の初日から同室の子爵令嬢ルームメイトには事の経過を話してあったから、特には避けられてはいなかったし、同情もされてた。あと、彼女繋がりの数人のご令嬢達もだ。

 だからなんとか学園にも通えてたのよね。


「そりゃあ、私は話を聞いて知ってるからそうは思ってないけど。なんだか気に入らないって上級生がいるみたいよ? カートレット先輩の婚約者って言ってる集団みたい」

「集団・・・? 婚約者って普通1人じゃないの!?」

「普通はね。でもあの人未だに婚約者がいないから、婚約者の座を狙ってる人が多いんだと思う。私達と違って上級生は卒業迄に時間がないじゃない?」

「時間って・・・? 何で?」

「殿下よ、殿下。カートレット先輩の同年代って第一王子の婚約者になりたいっていうご令嬢を抱えてる貴族家が結構多いのよ」

「え? 第一王子殿下には婚約者がいるよね」

「そうなのよね。でもさ、婚約者が『地味令嬢』って言われてるから、そのうち婚約が白紙撤回されるっていう噂があったらしいのよ」

「・・・? 王子殿下の婚約者になりたい人が、何であの乱暴・・・ゴホン・・・カートレット先輩の婚約者なの?」

「王子殿下と公爵令嬢はずっと婚約者同士のままじゃん」

「うん」

「北の辺境伯家って元々王族でしょ? 王位継承権も持ってるし。だから、売れ残る嫁き遅れるくらいならそっちで我慢するかって感じみたいなのよ」

「ナニソレ・・・信じらんない」


 私の言葉にルームメイトは頷いた。


「伯爵位くらいのご令嬢ってごまんと掃いて捨てる位居るからね。いろんな人がいるのよ・・・私達みたいな下位貴族の家とは考え方がそもそも違うんじゃない?」

「でも王族の責務ってすごく大変なんでしょ? 殿下達って魔獣討伐遠征よく行ってるじゃない? 知らないのかしら?」


 ・・・怖くないのかしら?


「戦えない伴侶を娶った場合、遠征の必要が無いからでしょうね」

「殿下たちだけで行ってこいって事?」

「そういうことじゃないの? 婚約者が居ない位の魔力持ちじゃ、たかが知れてるもの。実際の遠征になったら足手まといだって置いてかれるでしょうね。でもだからこそなりたいんじゃないの? 王族は絶対に第一線だもん」


 ――旦那元気で留守がいい?


「なんかやだなあ・・・」

「まぁ、あざとい女はいっぱいいるってことよ~。ま、とにかく今日は授業に参加しない方が良いと思うわよ。捕まったら何されるかわかったもんじゃないからね」

「・・・」


 変に権力のある馬鹿は怖い、と思っオリヴィエである。



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