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7章 東部辺境伯領
67.結婚相手は王子様?
しおりを挟む王妃の実家でもあるカスターネ家は代々東の辺境伯としてこのカスターネ領を守っている一族だ。
カートレット王国建国初期より『武のカスターネ』として有名で、隣国との国境近くの魔獣が出没する大森林地区をどう守るかという問題に突き当たった時、自らこの地に赴く事を申し出た忠臣の末裔である。
実直、勤勉、そして優れた身体能力を代々受け継ぐ家系であり騎士を目指す者が男女関係なく多いのが特徴で、王族主催のパーティーや茶会といった交流の場でもこれまた男女関係なく騎士のような衣装で出席することが多い為少々変わり種なのだが『カスターネですから』の一言が社交界でも免罪符のようになっており、周りも納得してしまうという不思議な一族でもある。
王妃殿下、つまりウィリアムの母であるアレクシア・カートレットは現当主の実妹で幼い頃から剣の名手と名高い兄と鎬を削り合う程の武闘派だったのだが学園での成績もこれまた飛び抜けて良かったらしい。
更には騎士を目指すが故に礼儀正しいまっすぐな性格をしており、それを好ましく感じた前国王夫妻に乞われ王太子妃になったという経歴がある。
――この娘なら王太子と国を任せても大丈夫だ――
前国王夫妻は成人を祝う夜会で彼女を見つけた時にそう感激らしい・・・
まぁ、そんな訳で。
どちらかというと現国王と彼女との相性や好みは関係なく王命で王子妃になった彼女だったが地頭の良さで王子妃業も難なく熟し、めでたく子も男児2人女児1人を国王との間に成して責任を全うしたわけだ。
そこに愛はあるかと問われれば『情なら・・・』と答える程度の認識の愛情と夫婦生活だった気がするが、まあまあ安定の王族ライフを過ごしているのが現状だ。
今現在は彼女の息子達2人も大きく関わっての結果である事は一部の人間しか知らない事実だが・・・・
×××
「だって、ウィリアム兄様達は私の従兄でしょう? アレクシア様はお父様の妹だから私の叔母様だわ。なんで仲良くしちゃダメなのよ!?」
ぶすくれた顔になり近場にあったクッションを抱きかかえると、目に涙を溜めてウィリアム達を向かい側のソファからキッと睨むマリアンヌ。
特にシルフィーヌをに敵意を剥き出しにしているように見えて、ウィリアムは溜息を付く。
「マリアンヌ。確かにお前は俺の従妹だが王族ではない。だからいくら俺がお前の従兄でも身分がお前より高い者に対して礼儀にのっとった対応をお前自身は俺達にしなくちゃいけないんだよ。それがルールだからだ。カスターネ伯にも伯爵夫人にも家庭教師にもその事は教わったはずだ」
「でも、昔は何も言われなかったわ」
「それはお前が幼かったからだ。お前はもう9歳だろう? 淑女としてのマナーは身につけねば自分が後々困るんだぞ?! お前の王族に対する態度が貴族達の間で問題視されかねないのがなぜ分からん? 」
言い募るウィリアムの横に座るシルフィーヌちらりと見てから
「私は兄様達のどちらかと結婚するの! だからそんなの関係ないの! それで王族になるんだからっ!」
――『またそれか・・・』
と小さくウィリアムが零したのをシルフィーの耳が拾った。
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