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9章 オリヴィエ・アボット〜過去〜
81. オリヴィエ・アボット⑥〜男性恐怖症
しおりを挟む俺様ッ!! 苦手なタイプの貴族だ~~さっきの先輩と大違いだッ! ひーん。
「へえ、お前可愛いなぁ。名前は?」
「え~っと、」
「俺は。アインス・カートレット辺境伯家の者だ」
「ひゃい。私の名前はオリヴィエ・アボットです。男爵家の娘ですぅ・・・」
私のバカ! こんなトコ通っちゃ駄目だった・・・北の辺境伯領の息子じゃん!
「ふうん。勉強熱心だな」
ムクリとベンチから立ち上がると、私の落とした本を拾ってくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言って手を差し出したら、ニッコリ笑って
「他のも持ってやる。ほら、寄越せ」
て、私の抱えてたあと3冊の本も取り上げられた。
「あ、あ、あの、大丈夫ですから・・・」
「遠慮するな。お前寮に戻るのか?」
「は、ハイ!」
睨まれたよぅ・・・・
女子寮の正面玄関まで送ってくれたけど、この人、ありがた迷惑って言葉知らないのかもしれない・・・・
×××
私がこの学園に来たのは、領地を継ぐ為に卒業証書を貰うためだ。
だってアボット家を継ぐには学園の卒業証書が必要なんだもん。
私は別に婿探しをしに来たのではない。
なのに昨日の辺境伯の息子が寮まで送ってくれたせいで、何だか周りが余所余所しくてクラスでも浮いてる気がする。
もう、無視して勉強に集中しなくちゃ! きっとお父様かお祖父様がいい感じの人を連れてきてくれるから大丈夫だし!
そもそも私は恋愛が怖い。
ママが若い時恋人を沢山作って大変だったってお祖父様から聞いてるし、その恋人同士が揉め事を繰り返してそのせいでママは元々の婚約者の家に嫁げなくなったって聞いてる。――ホントはその元婚約者が1番好きだったってママは言ってた。
ママも馬鹿だと思う。
ママが第二夫人としてお父様と結婚したのは完全に政略で、お祖父様は蚕の商売を大きくする為でお父様はアボット領の領民の暮らしを守るためのもの。
お父様は優しいし、お義母様はもの静かで如何にも貴族家の出身って感じの人。
だけど、ママは一見清楚な雰囲気で華奢だけど、出る所と引っ込む所のメリハリが効いてて娘の私から見ても美人だと思う。
今は1人で王都の別邸に住んでて、恋人が未だに後を絶たないって聞いてる。
孫の教育に悪いからって私の事をお祖父様が小さな頃に引き取って育ててくれたから、そのせいで私はどちらかというとおじいちゃん子だ――
若い男の子なんて見てるだけでお腹いっぱい。
本の中で素敵な王子様を演っててくれるだけで上等だ。
なのに周りの人達は私の陰口を叩く。
なんかもう、誰に文句を言ったらいいのかわからない。
×××
ある日、お父様から手紙が送られてきた。
アボット領で不思議な鉱石が見つかったらしく、研磨しなくても輝きを放っていて宝石のように見えるけれど魔力を持ってる人が触れるとその人と同じ魔力を石自体が発揮するのが確認されたんだって・・・
詳しいことを調べるために王家に献上して魔塔で鑑定してもらうんだそうだ――
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