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5章 コリンズ領
34.伯爵令嬢も転生者?
しおりを挟む諸々の様式美のような挨拶をコリンズ伯爵夫妻と王子達2人が済ませ、第1王子とその婚約者の為のささやかな晩餐会を開く準備をする為に夫妻が一旦退室したコリンズ伯爵家の応接間。
現在、この部屋の中にいるのはウィリアム王子とシルフィーヌ、そして伯爵令嬢であるエリーゼ嬢の3人である。
当然だが壁際には王子達の護衛やら伯爵家の使用人やらが壁際で犇めいている・・・(笑)
部屋の中央のソファーに座る王子達2人の向かい側、ティーテーブルの向こうに座ったエリーゼ嬢は、眼鏡の奥で何やら目をキラキラさせてシルフィーヌを見つめているような気が・・・するのはウィリアムも同様だったようで
「エリーゼ嬢、何故そんなに俺の婚約者に熱視線を送るんだ?」
と。
とうとう眉を顰めて思わず問いかけた。
――俺のシルフィーヌが減るじゃないか! ――
「え、えと。あの・・・」
「ああ。周りは気にしなくていいぞ。認識阻害の魔法を使ったからな。護衛や召使いたちには、天気やこの領の案内を頼んでいるようにしか聞こえんからな」
――何時もの殿下のアレ、である・・・
「え? 魔法? 王太子殿下が?」
思わず薄紫の巻き毛を揺らしてキョロキョロと辺りを見回した後、眼鏡の奥の目をパチパチするエリーゼ嬢。
「・・・俺は王太子じゃないぞ?」
「え。あッ! 申し訳ございませんッ!」
慌てて頭を下げる令嬢にそれには及ばないと手で合図するウィリアム。
「良いんだ。ところでエリーゼ嬢は何だってあんな本を書いたんだ?」
多分面倒になったのだろう。いきなり本題をぶっ込む第1王子殿下。
「へ? ほ、本、ええぇッ! 何故ッ」
顔色を青くさせてオロオロする彼女を見て、あ。間違い無い犯人コイツ、と思ったのはウィリアムだけでなくシルフィーヌも同様だ。
「エリーゼ様は、転生者なのですか?」
シルフィーヌの問いかけに、
「ヒョエエッ!」
飛び上がって何故か、ソファーの上で急に土下座をかますエリーゼ嬢・・・
「ご、ごごごご容赦下さいませッ! いいぃ異端審問とかはご勘弁をッ!!」
「「・・・」」
真っ青な顔で額をソファーの座面にこすりつけるエリーゼ。
「大丈夫だって、この世界にはそんなモンなんかね―よ。それに俺達2人もおんなじだからな」
「そうですわ。お顔を上げて下さいませ。お話が進みませんわ」
2人の声でガバッと顔を上げ、
「へ? あれ? 何で皆気にしないの?」
周りの召使い達が全く動じていない事に気がついて、困った顔になるエリーゼ。
「いや、だから俺達3人以外には会話が聞こえてねーんだっつーのッ! 俺の言ってる事聞けやッ!!」
イラッとして半眼になるウィリアム。
殿下は若干気が短い。
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