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1章 始まりの道
5.子守りに飽きた王子様
しおりを挟む「確かに・・・」
この眼の前にいる筋肉達磨の王宮騎士団長は、侯爵家出身で超の付くほどの愛妻家として非常に有名だ。
なので、俗に言う浮気やつまみ食い等は視野どころかその思考にかすりすらしないため魅了とは無縁の男である・・・
「因みに俺にとってはシルフィーヌ以外の女はただのモブだ」
王子の言葉でモジモジし始めるシルフィーヌ。
「? もぶ?」
「なのであのアボット家の娘と懇意にするなどあり得ない」
「・・・まぁ確かに。家格は全く追いつきませんしなぁ」
モブは分からないが王子の言いたいことは分かる騎士団長が頷いた。
「アレは教育そのものが怪しい上にマナーすら下位貴族のモノしか身に着けられないだろう。学園に通っていた時点で王族に嫁ぐ事なんぞ無理なのは明白なのに陛下があのビッチと俺を王命で婚姻させようと画策していたんだ。アレが『ウィリアム様と結婚したいですわ~』とか言ったらしくてな。それを知った王妃殿下が慌てて飛んできて教えてくれたんだ」
「え、そんなの初耳ですよ!?」
騎士団長が目を見開き、殿下に、ずいッと顔を寄せるが、やんわりそれを片手で押しのける王子。
――健全な男子が髭面の厳ついおっさんのドアップを見たいはずがない。
「だろうな。反対してるのは母上とアダム、あとはその周りにいる信頼出来る連中だけだからな。そもそも団長、お前父上に言われて追いかけてきたんだろう?」
「はぁ。その通りです」
「父上は魅了にかかってるから使い物にならん。重鎮達も大多数がそうだから当てにならん」
フンッと鼻を鳴らして不機嫌な顔をするウィリアム。
「陛下が魅了に・・・一体全体どうすれば良いんですか?! 大問題でしょうッ!?」
悲鳴に近い声を出す騎士団長閣下を、眉を下げながら見つめるウィリアム王子。
「後のことは母上とアダムに頼んである。大体な、俺も親父の子守に何時迄も付き合ってられんわ」
「「・・・」」
「なんで40歳にもなってあんなに軽率なのかが全くもって分からん。俺が2歳の頃から全く進歩してないじゃないかッ!」
若干ブチ切れた後で、ため息を付くウィリアムである・・・。
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