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2章 出会い

7.ウィリアムの裏事情

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 「今日初めてお会いするアーバスノット公爵令嬢シルフィーヌ様、本当にお可愛らしいみたいですよ侍女達が天使みたいだって騒いでました」


 ウィリアムの世話係である侍従の青年が王子の礼装の金の飾緒*飾りを整えながらニッコリと微笑んだ。


「うん。まぁそうらしいね」


 若干ムッツリと返事をするウィリアム王子。


「殿下、照れてるんですか?」

「会ったこともない上に酔った勢いの婚約って、お前ソレ嬉しいのか? しかも本人達には無断なんだぞ? 俺が彼女に嫌われてても不思議じゃないだろう?! 気が重いわッ!」

「・・・」


 侍従の引き攣り笑いが王子の発言が非常に常識的には的を得ていることを物語っているようだ。


「いや、大丈夫ですよ。殿下は大変優秀な上にイケメンですから。絶対に公爵令嬢だって一目惚れしますって!」


 慌てて言い繕う彼に向けてジト目になるウィリアム。


「まあ、そうなるといいよな」



 ×××



 実はウィリアムは前世を覚えている転生者だったのだが、その事は誰にも打ち明けてはいなかった。

 会社員だった前世は所謂いわゆるサラリーマンで、経理課に所属していたが慢性的な未病状態だった所に流行病をきっかけに発病し心臓に水が貯まるという症状を発症して敢え無く入院中に昇天した。

 気が付いたら生まれ変わっていたのには驚いたが、前世の記憶が鮮明なままの方に正直引いた。


『ウ~ン、いい大人が母乳を飲むってなぁ・・・』


 なかなか乳を咥えない赤子に周りは心配したが、結局背に腹は代えられない、いや腹が減っては戦はできぬ? と諦めるに至り周りを安心させた・・・ 

 何故か母乳を飲む時にやたらと顔が赤くなったが乳児にはよくあることなので気が付かれずに済んだが、彼にとっては黒歴史である。


 ――別に前世が童貞だったわけではない筈だが・・・


 まあ、周りの目を盗んで乳幼児の頃からバブバブと言いながら高速ハイハイで父親の執務室に紛れ込み魔法書や魔物辞典を勝手に眺めていたり、普通の子供なら気にもとめない様な事、例えば侍女達が魔法を使って掃除をする姿をご機嫌で見ていたり、子供なら怖がる様な騎士団の模擬戦を喜んで手を叩いたりと、少々変わった幼少期ではあったが教わる礼儀作法や学問、武道等をグングン吸収しながら順調に王子として育っていったのである――










 ▲▲▲


 飾緒*(しょくちょ)

 軍服等の肩から胸辺りに向かって下がってるロープみたいな飾りの事です(⁠・⁠∀⁠・⁠)
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