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3章 ゲーム開始?
19.続・男爵家と王家の事情
しおりを挟む――話が逸れた。
そのような経緯――つまり王家はアボット男爵家から今後のテコ入れ次第でボロ儲けになり得る事業を譲られたような形に図らずもなってしまった――が男爵家と王家の間に生まれてしまった為、ウィリアム王子もオリヴィエ嬢を無碍にするわけにもいかず、さりとて婚約者のいる身で女性に無闇と触れるのは憚られる為、結局側近や護衛に丸投げになりがちとなってしまったのである・・・
王子達2人共に婚約者が既に決まっているのと同様に、彼等2人の周りの子息たちも当然家格の釣り合った婚約者がいる者も多かったのだが、彼ら高位の貴族子息達から見てオリヴィエは面白い生き物だったようで、意外にも彼らにはウケている様に見えた。
但しウィリアム王子の目から見て、彼の男爵令嬢が面白いとか可愛い生き物だったかというと別の要素が多すぎて一層彼女から距離をとったのは、他ならぬ彼の婚約者であるシルフィーヌの忠告『この世界は乙女ゲームでヒロインの名前は恐らくオリヴィエだが、家名は分からない』があったからだ。
『うわぁ~、あの女あざと過ぎて引くわ~・・・ フィーの言ってた通りになってちゃってるよ。やっぱりアイツがヒロインなのか? ああやって男を手玉に取るのか?! スゲーな。でもお前らは後できっちり説教な!?』
周りの側近達や護衛がオリヴィエを構う様子を横目で眺めながら、心底引いているウィリアム王子の腹の中を知ったら、全員が顔を青くしたかもしれない。
「コレ、以前助けてくれたお礼とぉ、お近付きの印にと思ってクッキーを焼いてきたんですぅ~」
猫なで声で何故か、王族であるウィリアムに可愛くラッピングした包みを差し出すオリヴィエに、どうしたものかと貼り付いた笑顔を向けるウィリアム。
コレが小さな女の子が差し出した、例えば花とかなら問題も無いのだが彼女は結婚適齢期に差し掛かった微妙なお年頃・・・
しかも王族がおいそれとその辺の食べ物、しかも毒見すらしていないモノを喰える訳が無いのだが・・・
王族は王国民の守護者であり、その対象は高位の貴族だろうが市井の平民であろうが関係ない。
『守るべき王国民には寛大であれ』
という王家の体面と
『王族として不敬を行うものに対して毅然とした態度を貫く』
という相反する考えが頭の中でバトルを始める・・・
しかも周りの懐柔されてしまった側近達は
「「「殿下、良かったですね! 手作りとか」」」
とか! ってなんだ?! と問い質したくなる様な笑顔で言い出す始末である。
『貴様ら側近としての仕事しろ!』
と怒鳴りたいところだが、彼等や令嬢の体面も考えてぐっと堪えるのが辛い今日この頃・・・・
思わず天を仰ぐウィリアム王子。
ああ、空が青いな・・・
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